#2 国の障害者雇用不正 露呈する制度の矛盾

法定雇用率を満たすべく、民間企業が活用する特例子会社には大きな問題がある。また、行政の不誠実さは、障害者政策最大の矛盾だ。

宇部興産には、地域3工場を巡回する「UBE工場サポートチーム」(通称・山下商店)がある。計4人(知的障害者3人と、OBのシニア社員1人)がさまざまな問題解決に当たる。写真提供:宇部ケミカル工場

 総合化学メーカーの宇部興産の「特例子会社」としてリベルタス興産が設立されたのは1991年だった。

 社名は、ラテン語の「解放」から取り、障害からの自立、ひいては束縛・固定観念からの解放という思いも込められている。

 特例子会社というのは、障害者雇用に特化した専門子会社のこと。そこで雇用される従業員は、親会社の従業員と見なされ、そのまま法定雇用率としてカウントできる。リベルタス興産は、日本で42番目に設立された特例子会社だ。

 同社は今も、山口県内で唯一の特例子会社として、地域の企業や行政機関を巻き込んで障害者雇用の旗振り役を担っている。現在、社員43人(パート4人を含む)で、健常者15人と重度の障害者から中・軽度の障害者までの28人が一緒に働いている。

 柱となる業務は、①軽印刷、②文書のデジタル化、③清掃である。だが、近年は、デジタル化の進行で印刷物の受注が激減したことの影響を受けて、業績は厳しい局面が続いていた。3年連続赤字という状態で引き継いだ吉本良夫社長は、「あらためて、一つ一つの業務について、徹底的に損益計算をやり直したことで、黒字に転換できた」と実情を打ち明ける。

 その後は黒字が続いているが、「もはや新規ビジネスの開拓なくして、企業として存続していくのは難しい」(前社長の有田信二郎氏)。これは、全ての特例子会社にほぼ共通する話である。

 元々、企業に対して一定の枠を設けて障害者を雇用させるという動きは、フランスやドイツで始まった。その背景には、戦争で負傷した「国の英雄」を、可能な限り、社会に復帰させようという考え方から整えられた評価制度や社会参加の仕組みがあり、諸外国でも障害者雇用の礎となっている。

 日本でも1976年に、旧厚生省(現厚生労働省)による障害者雇用を促す仕組みとして特例子会社が導入された。前述のように、直接雇用が難しい企業のために特例子会社を設立して雇用すれば、雇用率にカウントしてもよいという特例措置である。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
数字合わせに終始しない 障害者雇用

週刊ダイヤモンド

2018年4月より、「障害者雇用」に関する法律が一段と強化された。組織形態を問わず、常用雇用者が45.5人(※)以上いる会社は、2.2%の割合で障害者の雇用が義務付けられた。だが、1年たった今日でも、こうしたことが企業の人事関係者以外...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード