時間の経過をどうキャラに反映させるか
溝口彰子(以下、溝口) 雲田さんの創作ノートを引き続き拝見しています。『新宿ラッキーホール』(以下『ラッキーホール』)では、様々なアウトローキャラが登場しますが、リュウというヤクザの組長の息子も、印象深いキャラクターです。元組員のサクマのことが大好きなリュウは、1巻ではいわゆる少女マンガ的美少年だったのに、2巻ではキャラがガラッと変わります。髪型はいわゆるツーブロックになり、斜めに流した前髪がちょっとフェミニンで、ハイファッションに身を包んでいます。このキャラクターはどう造形されていったのでしょうか。
初登場時のリュウ(『新宿ラッキーホール』より ©雲田はるこ/祥伝社 on BLUE comics)
再登場時のリュウ(『新宿ラッキーホール2』より ©雲田はるこ/祥伝社 on BLUE comics)
雲田はるこ(以下、雲田) まず、ラフに数字がいっぱい書いてありますが、これは1巻と2巻でのキャラの年齢を全部書きだしてみたものです。1巻で18歳だったリュウは、2巻では24歳になって登場します。これだけ時間が経っているということは、面影を残しつつも、大人になっているだろうなと思って手を加えていきました。
紗久楽さわ(以下、紗久楽) 若い子のほうが変化が著しいですもんね。
雲田 しかもヤクザになってしまっているので、苦労が顔に出ている感じにもしたかったんです。上のほうに描いてある顔が1巻のときのもので、そこからどう変えていこうかと考えながら描いたスケッチですね。
溝口 ずいぶん男っぽいスケッチもあります。次のスケッチもリュウですね。
雲田 これは、描いてみたけど、ちょっと違うな~という過程のスケッチです。
紗久楽 右に小さく「アゴクイ」と書いているのは……?(笑)
雲田 このキャラ造形だったらアゴクイ……アゴで指図するような動作をやらせたい!というメモだと思います(笑)。「オスらしさよりつよく」「フェミニンいらない」とも書いてありますが、これをやってみたのが右のスケッチです。これ、「スーパー攻めさま」(※1)っぽくしたかったんです(笑)。
※1 スーパー攻めさま:受けに対して強引な手法で迫るドSで、かつ人間としても裕福さや美麗な外見などのパーフェクトさをあわせ持つ、「スーパー」な攻めのこと。
溝口 なるほど。でも、まだ違うということになって、いよいよ次ですね。