絶望的に滞る情報をどう検索するか【後編】

後編は、フロリダのロイヤル・カリビアン・クルーズ、インドネシアのスマトラ島の破局噴火、マレーシアのコタキナバルの蛍ツアーと、世界をまたにかける四方山話が、検索の欲望をかきたてます。
広大なネット空間から無限の情報を引き出せる時代、私たちはどのように「うまく生きていく=検索をかける」べきなのか。縦横無尽に活躍を続ける評論家・東浩紀さんによる連載放談、第2回は星星峡(幻冬舎)2013年1月号掲載分です。
第6回から最新回までを更新している、【第2期】も併せてお楽しみください。

「本当にdeleteしますか?」

 震災とか原発とか重い話になってきたので、連載の主旨に戻して、なんでもいいから旅に出よう的な明るい話をしたいんですが(笑)、そのためにもやはり英語が重要です。アクセスできる情報がまったく違う。

 そういえばこの春、フロリダ発着でロイヤル・カリビアンのクルーズ船に乗ってきました。六千人ぐらい乗れる「動くテーマパーク」のような大型客船で、カリブ海をぐるっと一周したんですね。こういうクルーズを日本語だけで予約しようとすると、あいだに代理店が入って中間マージンが取られたうえ、選べるキャビンも少なくなる。だから英語での検索をお勧めします。そもそも有名なホテルはたいてい英語の公式サイトを持っているわけで、自力でクリック、クリックとしていくと、けっこういいサービスが続々と出てきます。そしてそのなかには手頃な価格のものも多い。ロイヤル・カリビアンもそうで、「豪華客船」「カリブ海」と聞くと身構えるひとも多いと思いますが、安いクルーズもあるんですよ。七泊八日、飲食代も全部入れて一人五万円くらい、とかいう激安の客室もあったはず。

 ちなみに、このツアーでちょっとおもしろいのが写真。ディズニーランドなどで、カメラマンが写真を撮っていて、欲しかったら後でお金を払うサービスがありますよね。あのシステムが異様に発達している。カメラマンがうようよいて、客を撮りまくってる。部屋番号を聞くわけでもないからどうなってるのかと思ったら、なんと顔認証なんですね。フォトブースに行って、ルームキーを入れると、自分の写ってる写真がすらすら出てきて、「どの写真を買いますか?」と。いや、その聞き方だったらまだこちらの気持ちもそれほど波立たないんですが、不必要だと思ってもいちいち「本当にdeleteしますか?」みたいなダイアローグが出てくるんです。そう聞かれると……どうですか?「俺は本当にこの写真を消去したいだろうか? 一応追加で千円払っておくか」となりませんか(笑)。よくできたシステムだなあと感心したんですが、放っておくと湯水のごとく金が出ていくので、気をつけて下さい。

地震よりも危ない火山の噴火

 インドネシアに話を戻しますね。ナショナリズム論の名著として日本でも読まれている、ベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体』。あの本でもインドネシアの話が出てくるのですが、たまたま先日、『想像の共同体』の翻訳者である白石さやさんとお会いする機会があったんです。

 それで知ったのですが、アチェ州は、日本で言えば薩摩みたいな所で、インドネシアが近代国家としてまとまるのに際し重要な役割を果たした地域らしいんですね。ところが結果的にインドネシアは、ジャワ島つまりジャカルタが中心の政府となる。つまりアチェは、自分たちがインドネシアの中心だったはずなのに、いつの間にか中心を持ってかれた、ちょっと屈折を抱えている。スマトラ島沖地震は、そんな対立が緩和されるきっかけになったようです。

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検索ワードをさがす旅【第1期】

東浩紀

検索すればあらゆることがわかる時代。日々たくさんの情報に埋もれているけれど、果たして本当に欲しい情報はなんなのか。その検索ワードはどこから思いついたのか。テーマはズバリ、「若者よ、スマホを持って旅へ出よ」。ただし、自分や目的を探すので...もっと読む

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