絶望的に滞る情報をどう検索するか【前編】

みなさんは、「Fukushima Prefecture」で検索したことがありますか? 今回は、話題の『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』を構想する以前、東浩紀さんがどのように思考して、チェルノブイリ取材にたどりついたかがわかるお話です。
広大なネット空間から無限の情報を引き出せる時代、私たちはどのように「うまく生きていく=検索をかける」べきなのか。縦横無尽に活躍を続ける評論家・東浩紀さんによる連載放談、第2回は星星峡(幻冬舎)2013年1月号掲載分です。
第6回から最新回までを更新している、【第2期】も併せてお楽しみください。

二五年後のフクシマを想像する

 一〇月の二八日、二九日と、福島県南相馬市に行ってきました。「福島第一原発観光地化計画」の企画第一弾として、現地でワークショップを開催するためです。

 僕が編集長を務める雑誌『思想地図β』は、次号の特集が「福島第一原発観光地化計画」です。二五年後の福島の原発跡地、未来のフクシマを、どのように観光地化するかという計画ですね。なぜ二五年後かというと、チェルノブイリの問題が大きく関わっています。チェルノブイリは一九八六年に原発事故を起こしたので、二五年後は二〇一一年、ちょうど東日本大震災の年にあたるんですよ。

 日本ではあまり知られてないことなんですが、チェルノブイリの周辺は既に除染が進んで、数時間であれば立ち入りできるようになっているんですね。チェルノブイリから南へ約一三〇キロの所にあるウクライナの首都キエフからツアーバスが出ていて、一般市民や外国からの観光客が、石棺と言われる四号炉そばの門まで行ける状態になっているようです。

 福島第一原発でも将来、同じようなことが起こると考えられます。東京から福島第一原発まで、約二二〇キロ。車で数時間ですから、多くの観光客が福島原発の跡地を訪れるという状態が、二五年後には間違いなくやってくるでしょう。人間って、そういうものなんです。ある種の怖いもの見たさで、悲劇が起きた土地を「観光」しに行くようになる。だとしたら、跡地をそのまま放置するのではなく、どのように観光地化し、フクシマの悲劇をどのように未来に伝えるかを今から考えておくべきではないのか。そのシミュレーションが、「福島第一原発観光地化計画」です。観光学で最近話題の「ダークツーリズム」という考え方も入っています。

 メンバーは僕の他に、ジャーナリストの津田大介さん、IT企業の経営者の清水亮さん、建築家の藤村龍至さん、アーティストの梅沢和木さん、ライターの速水健朗さん、『「フクシマ」論』で毎日出版文化賞をとった社会学者の開沼博さんなどですね。分野の異なる、個性的な方々に集まっていただき、継続的に研究会を開いてきました。

 そんな中での、南相馬のワークショップです。いつものメンバー及び写真撮影班、スタッフ、某週刊誌の取材班も相乗りといった感じで、総勢一九名で現地を訪れました。南相馬の若い市議会議員に協力をあおぎ、現地の二〇代から三〇代ぐらいの医師や経営者の方々を集めてもらって、「二五年後のフクシマを考える私たちの計画について、どのように思いますか?」という意見交換をしてきました。

ムガル帝国とケネディ宇宙センター

 詳しい情報は福島第一原発観光地化計画のポータルサイトを見ていただきたいんですが、僕自身が今考えているアイデアをざっとお話しします。

 南相馬か、もしくは、より東京に近いいわき市や白河市になるかもしれませんが、そこにビジターセンターを作ることを考えています。観光客をいったん集めて原発跡地にバスで向かう、いわばバスツアーの発着所ですが、それだけではありません。原発事故を後世に伝える博物館だとか、除染技術を学ぶ研修施設などを併設する。家族旅行で連れて来られた子供たちのために、原子力の未来を描いた過去作品を紹介するSF・アニメ館などもいいかもしれません。福島第一原発の跡地にはそこからバスで三〇分から一時間といったイメージで、線量計を配付し厳密な管理のもとで安全に事故跡地を見学できるようにする。スマートフォンをかざすと専用ソフトが起動して、三・一一の混乱をAR技術で疑似体験できるようにするなど、いくつかアイデアが考えられます。防護服を着用し、廃炉作業の見学もできるようにします。

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検索ワードをさがす旅【第1期】

東浩紀

検索すればあらゆることがわかる時代。日々たくさんの情報に埋もれているけれど、果たして本当に欲しい情報はなんなのか。その検索ワードはどこから思いついたのか。テーマはズバリ、「若者よ、スマホを持って旅へ出よ」。ただし、自分や目的を探すので...もっと読む

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