ネットフリックスのオリジナルドラマとして2013年から配信されている「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」。女性刑務所の受刑者たちの収監前の人生模様を描いた作品で、多くの視聴者を獲得した。
だがこのドラマは、ネットフリックスの社内ルールを逸脱した“おきて破り”の作品だった。「脚本がある」「キャスティングのめどが立っている」という、コンテンツ制作の二つの条件を満たしていない段階で、テッド・サランドスCCO(チーフ・コンテンツ・オフィサー)率いるコンテンツ部隊がゴーサインを出したのだ。
一見無謀な決断だが、成長のために大量のオリジナル作品を制作する必要があるコンテンツ部隊にとって、当然の選択だった。
ネットフリックスの強みを語るとき、技術力の高さやコンテンツの豊富さといった、個々の要素が注目されることが多い。それは正しいが、同社の強さの真骨頂は、即断即決で生まれる各要素の相乗効果にある。
1億4000万人の有料会員。毎月入ってくる莫大な資金。それを新たなオリジナルコンテンツの獲得・制作や、レコメンド機能(「4億人の視聴データを武器にする 未来型エンタメ企業のテック力」参照)などの技術分野へ惜しげもなく即座に投資する。
しかもこの四つのサイクルを、サランドスCCOが即断したように、社内ルールを無視してでも速める努力をしている。4要素の“超高速回転”こそが、同社を王者に押し上げたエンジンなのだ。
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