コンテンツ爆買いで達成 ハリウッド随一の質と量

【こぼれた企画は逃さず物にする】
ネットフリックスは近年、世界の映像コンテンツの中心地、米ハリウッドへ重心を移動。自慢の投資力を武器に、ハリウッドの勢力地図を塗り替える一大旋風を巻き起こしている。

 大物俳優や監督をつかまえたければ、ネットフリックスのロサンゼルスオフィス1階のロビーに行け──。

 ハリウッドの映画関係者の間では最近、こんな冗談が交わされるという。これはまったく根拠のない話ではない。

 ネットフリックスは、大手映画会社がもうからないと判断したり、予算を出せず手放したりした企画を片っ端から拾って、オリジナルコンテンツとして独占配信権を取得している。何しろ2018年のコンテンツ投資額は130億ドル(1兆4000億円超)。莫大な予算を持っている。映画化の企画を抱えた監督や俳優たちはその予算を当てにして、ネットフリックス詣でをしているのだ。

 実際、ネットフリックスが、他の映画会社が手放した企画を拾ったという話題には事欠かない。

 例えば今年、独占配信を予定しているオリジナル映画の「アイリッシュマン」。巨匠マーティン・スコセッシが監督を務め、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノという2大俳優が主演する。すでに来年のアカデミー賞で話題をさらうといわれている映画だ。注目作品だけあって、配給権は6大映画会社の一角、パラマウント・ピクチャーズらが押さえていた。

 ところが、制作費は右肩上がりで増え続け、ついに1億ドルを突破してしまう。すると、資金の出し手たちが採算ベースに乗らなくなったと判断し、プロジェクトから離脱してしまったのだ。

 配給権を取得していたパラマウントもこれ以上、資金を拠出して支えるのは無理だと判断。やむなく配給権を放棄することになり、「アイリッシュマン」の企画は土台から崩壊しかけた。

 そこへ手を差し伸べたのがネットフリックスだった。即座に制作費を拠出し、全世界への独占配信権を取得。支払った金額は数億ドルを下らないといわれるが、年間のオリジナルコンテンツへの投資予算をふんだんに持つネットフリックスにとっては、痛くもかゆくもない額だった。まさしく「コンテンツ爆買い」である。

 こうしたカネ払いの良さは、20世紀型メディア王のナベツネこと渡辺恒雄氏とも重なる。同氏が率いる読売新聞グループのキラーコンテンツは読売巨人軍だ。他球団のエースや4番打者を高年俸でかっさらうのは、常とう手段だった。

 ネットフリックスのコンテンツ爆買いは、同社からすれば当然の戦略である。同社の根幹のビジネスモデルは会員に継続課金するサブスクリプションだ。このモデルの成功の鍵は、常に会員を満足させることにある。

 見たいと思うコンテンツがなければ、会員からすぐに解約されてしまう。それを防ぐために、少々マニアックなテーマのコンテンツでも、見たいと思う人のためにそろえておく必要がある。

 だから配信権取得のチャンスと見るや否や手を回し、コンテンツの多様性を確保しているのだ。

 19年のアカデミー賞で作品賞など10部門にノミネートされ、外国語映画賞など3部門を受賞した「ROMA/ローマ」は、そんなネットフリックスのコンテンツに対する考え方があったからこそ、世に出た作品だといわれている。

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週刊ダイヤモンド 2019年4/20号 [雑誌]

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ダイヤモンド社; 週刊版
2019-04-15

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NETFLIXとナベツネとコンテンツの未来

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メディア王──。コンテンツを届ける産業には、時代ごとに“勝者”が存在する。彼らは人々の日常生活に入り込み、ライフスタイルを変え、世論を動かす。その圧倒的な影響力の源泉は何か。本誌は新旧二つのメディア王に焦点を絞った。読売新聞グループと...もっと読む

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