どうもどうもどうも! たそです!
いよいよ第3話です。いったん受験編はこれにて「完」という感じです(韻踏んだわけじゃないよ)。
巷では「この話はフィクションなのか?」という声もチラホラ聞こえてきますが……
安心してください。全て実際のエピソードになります。
それでは張り切ってゴー♪
【2004年3月宝塚音楽学校受験2回目~第2次試験前夜~】
生まれて初めて2次試験の切符を手に入れた私は、とにもかくにもまずは会場である宝塚付近のホテルの予約をすることにした。
しかし、3月の宝塚受験シーズンは、受験スクールなどが1年も前からホテルの団体予約をしているのである。出遅れた私はパソコンで宝塚市の宿泊施設をくまなく探したが、市内の上位に出てくるホテルはすべて埋まってしまっている。焦った私は検索地域を関西に設定し、
「きっとここら辺も近いだろ、しかもめっちゃ安い」
と、大阪は梅田駅東梅田周辺のビジネスホテルを誰にも相談せず予約した。
当時我が家は弟が生まれたばかりだったこともあり、同行者は親ではなく親戚のおばさんが京都観光もかねて引き受けてくれた。試験前日、おばさんとふたりホテルに荷物を預けたあと、シミュレーションを兼ねて阪急電車で宝塚へ。初めて見る音楽学校と宝塚大劇場……ほ、本当に存在するんだぁとホワホワしつつ宝塚市を散策した。
夕食を済ませ、日も暮れたころ東梅田へ戻ると、そこは……ほんまもんの繁華街だった。
ホテルの前後左右対角線全て周りはネオン輝く不夜城(ヒプマイ)だ。軽くショックを受けながら部屋へ入ると、部屋がシングルベッドと同じ幅しかない。
……荷物、どこ置いたらいいん?
隣の部屋のおばさんはどう思っているだろう。せっかくついてきてもらったのに私が安さでホテルを選んだばっかりにこんなことに……。猛反省していると、おばさんとは別隣の部屋からものすごい大きな「壁ドン」を食らった。もちろん、ときめく方の「壁ドン」ではない。
これ以上お隣さんの声が聞こえてこないよう、私は壁に貼り付けられたテレビをつけた。すると放送されていたのは、映画版クレヨンしんちゃん「嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード」。
下がりまくったテンションを上げるにはこれを見るしかない。
私は藁にもすがる気持ちで画面を見つめた。そして気がつけば、野原一家が奮発して購入した最高級焼肉を食べるために奔走する姿に、涙をこらえながら必死で見入っていた。
そんなこんなで、本来なら「緊張して眠れない」的な青春受験物語要素があっても良かった2次試験前夜は、謎テンションのまま、「焼肉食べたいな」という気持ちだけを残し、過ぎて行ったのだった……。
【2004年3月宝塚音楽学校受験2回目~第2次試験当日~】
その日の朝は万年寝坊遅刻野郎の私が嘘みたいに早起きすることができた。きっと、少しも早く(ベルばら)、「この場から離れたい」という気持ちがそうさせたのだと思う。
幸い、この日以降は宝塚市内のホテルをとることに成功している。昨日までの自分とはおさらば。気持ちを切り替え、駅へと向おうとしたその時……自分の目の前を黒猫が横切った。
(あゝだめだこりゃ。落ちるわ。オワタ)
ホテルチョイスミスからの縁起の悪さ。極めつけに前厄。巫女さんのバイトをしても厄は落とせなかった。そんな自分をなぐさめる言葉もなく、おばさんとふたり、終始無言で宝塚のホテルまでの道を歩いた。
到着し、おばさんは荷物を置くやいなや「じゃあ、嵐山行ってくるね」と駅へ向かっていった。おばさん、ありがとう。嵐山で気分転換してきてね。
2次試験では、生まれて初めての「宝塚音楽学校」に足を踏み入れた。
(まだ受かってないのに音楽学校に入れたし、なんかもう記念になったし悔いもないかもな)
すでに自暴自棄になりかけていた私は、そんなことを思いながら、入口にある小林一三先生像(※阪急東宝グループ創業者にして宝塚歌劇団の生みの親) に黙礼し、控室へと向かった。
2次試験は会場が1つになるので、より容姿端麗激戦区となる。控室では、1次試験を突破した「キラキラ全国代表選手」達がひとりひとりレフ版を持っているんですかね?ってくらいの光を放ちながら待機していた。受験スクール出身の人たちはみんな試験対策がバッチリなので、適宜間食をとったり、情報交換したり、待ち時間を有効活用している。更には、前の年に合格している先輩たちが控室に来てくれて、仲睦まじそうに談笑している。キラキラの2乗3乗。本当に眩しい。
そんな中、野良受験の私はすみっコにぽつんとひとり佇み、眩しい人たちをガン見していた。こう見えて本格的なコミュ障なので誰とも話せず、昨日からの「凶」コンボに頭を奪われていたせいでお昼ご飯も忘れてしまい、カバンの中に入っていた春日井の黒飴をバリボリバリボリむさぼって時間をつぶした。
2次試験では歌・ダンスに加え、1次試験には無かった「面接」がある。歌やダンスでは10人くらいが一斉に部屋に入り、お互いに課題をこなす姿を見ることができたのだが、面接だけはひとりずつ部屋に入って入れ替わるシステムなので、中で何が起きているのか全く分からない。廊下で待機していると、部屋から出てくるや否やほぼ全員が泣き出してしまう。一体どんな辛辣なコメントを叩きつけられるのだろう……。
だいぶ縮みあがったところで自分の番が来た。恐る恐る中に入り、指定された位置に立つ。目の前にはピリリとした印象の試験管の先生方がずらっと並んでいて、その背後の壁に面接課題が書かれた紙が貼ってあった。……のだと思うのだが。
ここで信じられない事実が判明した。
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