加藤シゲアキの回想力
直接そうは言ってないけど、言いたいことが伝わってくる!
カタカナは目立つ。
文章をさらさらと読んでいても、ぱっ、と目に飛び込んでくる。
そしてそのカタカナが、物珍しいものであればあるほど、なおさら。
この文章でいちばんのポイントは、まあ、なにはともあれ「ウスバカゲロウ」だろう。
これは短編小説のなかの一場面。
アンという幼馴染が泣いているところを、主人公が見ている......という状況だ。
そのなかにあって、僕が考えていることといえば、
「ウスバカゲロウ」と「蟻地獄」についての思い出だという。
一見、読み手はわからない。
「へ? なんでここでウスバカゲロウ? ん? 蟻地獄?」
と疑問に思い、戸惑う。
わりと唐突な挿入なのだ、この場面は。
だけど裏を返してみれば、
読み手が「しっかり戸惑える」場面でもある。
小説をさらさらと楽しんでいる読み手の頭に、
突如「ウスバカゲロウ」と「蟻地獄」という言葉が割り込んでくるからだ。
「ウスバカゲロウ」を読み飛ばされては、この場面は成立しないのである。
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