アキが無事出産したことを、渋沢の家で知った。
半裸状態で牛乳を飲みながらスマホを見ていたユウカは、思わず牛乳を吹き出してしまった。
【アニ子の夢工場】というブログで、アキが一人娘を産んだことが報告されていたのだ。
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<アニ子の夢工場>
3月3日
滞在中の女性が15時間の難産の末、玉のような娘を産んだ。
母子ともに健康。
しかし、父親はおらんので、立ち合いはなし。
ふたりでよく頑張った。
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そのテキストを読んで、ユウカはさーっと血の気が引いた。
「これはまずい。わたし、出産の立ち合いをしたいって言ってたのに。まさかこんなに早く産まれるなんて……」
あんなにお世話になった人なのに、どんな顔して会ったらいいんだろう?
いや、悩んでる暇なんてない。一刻も早く会いに行かねば!
突然、どたばたし始めたユウカの物音に気づいて、渋沢も起きたみたいだ。
「どうしたの? ユウカさん」
「アキさんが産まれたみたい」
「アキさんは産まれないよ。アキさんの子どもが産まれたんだろう?」
「もう! そんなことはいいから、渋沢さん早く車出して」
渋沢も服を取り出して着替えると、急いで車で読谷村まで向かった。
渋沢の家からだと車で30分くらいの距離だ。
「ほんとに、私なにしてたんだろう? よりにもよってこんな時に」
「ナニしてたんだろう?(笑)」
アキが出産の苦しみにあえいでた時に、たしかにユウカと渋沢はセックスをしていた。
罪悪感が胸の中に充満していく。
「こないだ晶ちゃんが産んだばっかりなのに、また友達が出産で、出産ラッシュだね」
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