その皮、むくか、むかないか

13歳頃まで、キウイを食べるときには半分に切ってからスプーンですくっていたという牧村さん。しかし、あることがきっかけでその食べ方をやめたのだそうです。その時の傷ついたエピソードをもとに、私たちひとりひとりはあまりにも違うということ、そしてその愛おしさについて考えていきます。


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「今日は社会に出ないぞお」

という強い決意のもと、おふとんにもぐり込む。

午前11時だ。

絶対に、一日ひとりで寝たい。

人間社会はたいへんだ。
人間たちはみんな違う。
人間たちがみんなひとりひとりあまりにも違うよなあということについておふとんで考える。たとえば、食べ物の皮の話から。

キウイフルーツで傷ついたことがある。

キウイフルーツをあなたはどう食べるだろうか。わたしはかつて、「半分に切ってからスプーンですくう」食べ方をしていた。13歳くらいまでそうしていただろうか。それをやめたのは、こんなことがあったからだった。

神奈川に生まれ、家にわりと米兵がいた。 わたしには英語がわからなかった。 米兵にも日本語がわからなかった。 その日もうちには米兵が来ていた。米軍基地の中で指導的立場にいるというその人は声がデカくて、体もデカかった。BIG AMERICA。テーブルの向かい側にそのでっけえ米兵が座っているという状況でわたしはキウイを切った。食べた。半分に切ってスプーンですくって食べた。すると米兵は、残った皮を、キウイのぬけがらみたいな皮を、太い指でつまみ上げて、

「mkfodsjihtrkjlmflp:n fs,wsopez:rhmngf;l !! HAHAHAHAHAHAHAHA!!」

なんか言って爆笑したのだった。

わたしには英語がわからなかった。
米兵にも日本語がわからなかった。

こわいのと、くやしいのとで、しばらくキウイを見るのも嫌になった。ここは日本なのに、なんでお前らに合わせて英語を話してやらなきゃいけないの? ここはわたしの家なのに、なんでお前らの気にいるようにキウイを食べなきゃいけないの? 子どものわたしは小さくて、米兵たちはデカかった。わたしが半分に切って食べるキウイを、デカい米兵は、皮ごとかじって食らうのだった。

その家を出て、恋をした。

とっても素敵な人だった。 とっても素敵な人にリンゴを食べさせてあげようと思って、皮をむいたら、「この皮がおいしいんだよう、」そう言って、その人は皮をシャクシャク食べてしまった。くるくるとむいたリンゴの皮は赤いリボンみたいで、赤いリボンみたいなリンゴの皮をシャクシャク食べるその姿は、とっても、可愛かった。

それからというもの、その人と離れていても、果物の皮をむくだけで、なんか、幸せになった。恋って、そういうものだ。

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ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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