<部下とビジネスパートナー>
「同志」のような存在に期待しない。
利害関係と目的が一致すればとりあえずビジネスはうまく進む。
オン・ザ・エッヂを立ち上げたときのメンバーは、僕を含めて4人だ。
そのなかには僕と同じ東大出身者もいた。大学で知り合ったわけではなく、バイト先で知り合ったので、ビジネスパートナーという認識だった。
みんな年の離れていない、友人同士の関係からのスタートだった。
創業直後から、インターネット関連の需要は多かった。時代はまさに、インターネットの黎明期。制作を受注できる専門的なスキルを持った会社の数は、限られていた。
僕たちみたいな小さな会社にも、続々と仕事が舞いこんできた。創業からわずか1年4カ月で、オン・ザ・エッヂは株式会社に改組した。
会社が大きくなっていくにつれて、創業メンバーとの溝が、開いていった。
もともと仲良しの間柄で集まったわけではない。多少の意見のズレはあって当然なのだけど、「それは違うんじゃない?」と言い合う場面が増えてきた。
社員が増え、扱う案件のスケールが大きくなり、社外からの人の出入りも激しくなって、それぞれ気持ちに余裕がなくなってきた。
僕は銀座に家を借りていたのだけど、ほとんど帰れずオフィスに泊まる日々が、何カ月も続いていた。外食ばかりで、遊びにも行けない。若さも加わって、イライラが募り、社内で創業メンバーと口論になる……という悪循環に陥っていた。
いろんなことがあって結局、創業メンバーはみんな会社を去った。
創業直後に入社した社員の大量離脱という憂き目にも遭った。
実体験から言うわけではないが、もし起業を望んでいるとしたら。
「別れたくない友だちとは、一緒に会社をやらない方がいいんじゃないの?」
と伝えておこう。
仲良しこよしの家族的チームでいたいと願っていても、メンバーが各々年齢を重ね、経験と知識を身につけていくうち、最初の仲間的な関係は、必ず変化する。必ず、だ。