「ゆく道は、協同のみち。相共に歩みてゆくを喜びとせん。」
これは山形県・JAやまがた出身でJA全農会長に上り詰めた長澤豊氏の座右の銘である。
だが、長澤氏が理想とする「農協像」と実態には、大きな乖離があることが本誌取材で分かった。
JA全農の長澤豊会長。2017年の就任時に地元で開かれた祝賀パーティーには県知事ら数百人が集まった。
Photo: JIJI
下図を見てほしい。JAやまがたが職員に課す営業ノルマの一部をリスト化したものだ。毎年これだけの商品の販売を強いられる職員の負担は相当なものだ。
農協内部の関係者によれば、「金融部門の職員から共済の契約実績を買い取ったり、不必要なものを自分で買う自爆営業をしたりして、ノルマをこなす営農部門の職員もいる」という。
こんな昔ながらの事業スタイルを続けて展望が開けるわけはない。実際に、JAやまがたでは中堅や若手の職員の離職が相次いでいる。
こうした状況は農家にとってもよくない。前出の関係者によれば、「長澤氏が県中央会長、全農会長へと上り詰める過程で、農協が全農の“下請け”となり、独自性が消えてしまった」という。