前の章で、「対話」とは、一方的な技術だけでは歯が立たない「適応課題」を解消していくための方法であり、「新しい関係性を築くこと」であるとお伝えしました。
対話に取り組むことによってこそ、互いの「ナラティヴ」の溝に向き合いながら、お手上げに思えるような厄介な状況も乗り越えていくことができるのです。
この章では、実際にどのように対話をすればいいのか、対話のプロセスについてお伝えしていきます。
「溝に橋を架ける」ための4つのプロセス
対話のプロセスは「溝に橋を架ける」という行為になぞらえることができます。
仮に組織の中の異なる部門の代表同士が対話すると考えると、それぞれの部門ごとのナラティヴが互いの足場のようなもので、両者の間には溝があります。このナラティヴの溝(適応課題)に橋(新しい関係性)を築く行為が、対話を実践していくことなのです。
ハイフェッツたちは、適応課題に挑んでいくために、「観察ー解釈ー介入」のプロセスを回すことが大切だ、と述べました。しかし、私は日本の組織文化の現状を踏まえ、もうひとつ、観察の前に「準備」の段階をつけ加え、ハイフェッツたちの考え方よりも、もう少し取り組みやすいものにする必要があると考え、その点を修正してあります。
この「溝に橋を架ける」ためのプロセスを、大きく4つに分けることができます。
1.準備「溝に気づく」
相手と自分のナラティヴに溝(適応課題)があることに気づく
2.観察「溝の向こうを眺める」
相手の言動や状況を見聞きし、溝の位置や相手のナラティヴを探る
3.解釈「溝を渡り橋を設計する」
溝を飛び越えて、橋が架けられそうな場所や架け方を探る
4.介入「溝に橋を架ける」
実際に行動することで、橋(新しい関係性)を築く
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