“やさしくない”ことが魅力である
──「落語ブーム」と言われるようになって、すでに数年が経っている気がします。なぜ、いまこんなにも落語が注目を集めるようになったんでしょうか?
サンキュータツオ(以下、タツオ) 注目を集めているかどうかはわからないですけど、まず、演者の分母が増えたということ、それに伴って落語会がたくさん行われるようになったということ。その結果として、お客さんが増えたというのは、まず間違いない。
──落語会の数も増えているんですか?
タツオ めちゃくちゃ増えました。だいたい月に900公演、年間では1万公演くらいが日本全国で行われています。演者さんも東西合わせて1,000人に迫るような勢いで増えている。これは、有史以来最多ですからね。それだけ演者さんがいるのに、都内で寄席は4軒(鈴本演芸場、浅草演芸ホール、新宿末廣亭、池袋演芸場)プラス国立演芸場。明治時代とかには200軒くらいありましたからね。
そうなると当然、寄席に出られない落語家が増える。ということは、地元や商店街などで演る人が増え、寄席まで出向かなくても落語を聴く機会が増え、お客さんが一人ずつ増えていく。これは、主催者と演者さんの努力の賜物ですよ。だから、流行ってそうに見えるというのは、必然の結果なのかなと思いますね。
──機会は増えたとしても、いまってNetflixもあれば、ほかの娯楽もあふれていて、あらゆるエンタテインメントが時間の奪い合いをしているじゃないですか。それでも「落語を聴きにいきたい」と思わせる魅力って、なんだと思いますか?
タツオ やさしくない、ってことですかね。手取り足取り、全部を教えてくれないっていう。落語って、演者の話を自分が想像してはじめて理解できるもの。能動的に自分でアクションして得られる快感、自分から発見する楽しみがあって、そうした「自分で楽しみを見つけたい」という人にハマっているんじゃないでしょうか。
ドラマのおかげで落語が“いい感じ”になった
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