恋がうまくいかないのは、ぜんぶ容姿のせい?

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。今回は若い人の自己肯定感の低さについて。森さんは、「整形しなきゃ」「ムダ毛をすべて排除しなきゃ」「胸を大きくしなきゃ」と焦っている女の子たちの姿に胸をしめつけられながらも、自己肯定感を高める方法について考えていきます。

最近、自己肯定感が低い人が増えているように思う。自己肯定感とは、ひらたく言うと「自分には価値がある」と思える感覚のことだ。

まあ、「自己肯定感が低い人が増えている」と疑問を呈している私自身も昔から自己肯定感が低く、このエッセイでも度々披露してしまう赤っ恥話は、すべて自己肯定感の低さから派生したものだ。

若いひとたちに強くある整形願望

私は昔から容姿や学歴へのコンプレックスが強く、だからこそ経歴が問われない小説家になったのである(たまに写真や動画が出てしまうが)。才色兼備じゃなくても、小説家と判明したとたんに頭が良さそうに見える(らしい)し、知的なルックスに見える(らしい)のだ。口を開けばイメージ総崩れなのはご愛敬。

しかし、昨今は若い人達の自己肯定感の低さが目立つ。これは、私が自分の秘部(女性器)について調べるうちにたどり着いた思わぬ副産物であった。ここ数ヶ月やたらと秘部秘部うるさくて恐縮しきりだが、秘部からはじまって顔、全身まで、いじりたい(変な意味ではなく)人でネット界隈があふれていたのだ。つまりは整形願望である。

え? 私が渇望しても叶わない若さだけではなく、美しさも十分兼ね備えた女の子達がどうして自分を卑下しているの?「整形しなきゃ」「ムダ毛をすべて排除しなきゃ」「膣を縮小しなきゃ」「胸を大きくしなきゃ」だの「女性器の形を整えなきゃ」だの、どうしてそんなに焦っているの? まるで強迫観念に駆られたように、造形美にこだわるのはなぜ?

おそらく突発的な欲求に従い、てっとり早くお金を稼いでは整形を繰り返す。「×××しなきゃ」の続きには「彼氏にフラれてしまう」「彼氏に浮気されてしまう」「彼氏ができない」という隠れた文言がある。これらすべて、自己肯定感の低さからくる負の連鎖ではないだろうか。

原因はすべて自分の容姿のせい?

実際、彼氏にフラれたり浮気されたり、あるいはなかなか彼氏ができない女の子もいるかもしれない。でも、原因をすべて自分の容姿に落とし込むのは短絡すぎないか。いや、違う。容姿はお金を出せば変えられるから、あえて容姿のせいにしているのではないか。だって、そのほうが楽だから。本当は、己の内面や境遇が原因でフラれたと、深層心理ではわかっているのではないか。

でも、長年培われた内面は、お金を出しただけでは変えられない。そして内面というのは見えないからこそやっかいだし、内面が変わったとしてもやはり見えないから確認するのも難しい、というかできない。ならば「私の目が小さいから」ということにして目を大きくすればいいし、「ムダ毛が濃かったから」ということにして全身脱毛すればいい。

表面上の問題が解決して見事新しい彼氏をゲットしても、遅かれ早かれフラれるだろう。するとまた別の部分に焦点をあて、かつて私が調べまくったように「もしかして私の秘部ってゆるいのかもしれない。きっとそうだ」ということにして、何らかの処置を施す。これでは、いつまでたっても解決しない。

ネット民の中には、自己肯定感云々ではなく趣味で整形を繰り返しているのかな、という女の子達もいる。コスプレのためとか、自分自身のためならいいのだが、相手に合わせて常時自分をアップデート!というのは、それこそ自分がどこかに行ってしまった気さえする。特に秘部の整形というか形成は自分のためというより相手のため(以前も書いたが、日本人女性は自分の快楽より相手の快楽を重視して手術をする傾向にある)にするものであり、自己肯定感の是非が如実にあらわれる。

自分自身が感じる快楽はどこにあるのだろう

お金をかけて痛い思いをして、彼氏に「すごくよくなった」と言われて満足する。その満足感が快楽に通じればいいのだが、たぶん優越感しかない。私は彼氏のためにここまでやったのよ、という優越感。これも自己肯定感の一種だけど、だったら自分自身が心の底から感じる快楽ってどこにあるのだろう。どこに行ってしまうのだろう。

あなたの彼氏が好きなのは、あなたの狭い秘部であり、あなた自身ではない。あなたがけなげに彼を思ってした、形だけを彼氏は愛し、あなたの気持ちはわかっていないかもしれない。本来なら、あなたのけなげな気持ち、心が愛されなければならないのに。

昔からのコンプレックスやトラウマや、日常生活に支障が出るとか、仕事のためとか、前述したように趣味のコスプレとか、純粋に自分のための整形や形成や脱毛なら大いにやればいいと思うし、私もやるだろう。そこに、彼氏や彼女のため、とか他人が介入する場合はよくよく考えたほうがいい。彼氏や彼女と別れた時に、また違う理由を自分の肉体に探してしまうかもしれないから。

フラれる、浮気される、彼氏彼女ができない、すべてやりきれない。死にたくなるほどやりきれないだろう。でも、どんな事情であれ、出会ってしまったかぎり人は別れるようにできている。そして、新たな誰かと出会うようにもできている。自己肯定感とは何ら関係がないのだ。

自己肯定感の低さにつけこむ人もいる
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アラフィフ作家の迷走性活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。47歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する...もっと読む

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