季節をつまみに飲むために【スズキナオ】

お花見、暑気払い、忘年会…酒のみと言えば、年がら年中、酒が飲める口実を探しているわけで。今回はスズキナオさんによる新しいん飲み会のご提案です。
なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、ぬるーく書いていくリレーエッセイです。過去の連載へはこちらから。

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秋のお聞香

金木犀の香りがする季節になった。なぜか切なく胸がしめつけられるような感じのする、あの香り。秋が深まって、今年ももうそろそろ年の瀬が近づいてくるんだなと思う。
毎年そう感じているくせに、金木犀がいつ頃に香り出すのかを私は知らない。だいたい9月中旬から10月中旬ごろに開花してあの匂いがするらしいのだが、桜の花だったら「そろそろ咲く頃かな」と待ち遠しく思ったりするのに比べて、金木犀は「あっ!この匂いは!」と香りを吸い込んで初めて気がつく。
これはもちろん季節の変化に疎い自分のせいなのだが、でもそれにしても、あんなに特徴のある香り、もっとみんなで一緒に楽しみにしてもいいのではないだろうか。桜の開花予想がテレビのニュースで流れるように、金木犀の開花予想がテレビで取り上げられ、「来週の前半には香ってくるところがあるでしょう」「いやー楽しみですねー!」とアナウンサーたちが微笑みあうような、そんなことがあったっていいじゃないか。
もしそうなったら、友達を集め、金木犀の花が咲いているスポットで香りを楽しみながらお酒を飲む会を催すことだってできる。「花見」じゃなくてなんだろう……。「香り吸い」か。お香を楽しむことを「聞香(もんこう)」と言うみたいだから、「春のお花見」に対して「秋のお聞香」、ということでどうだろうか。
金木犀の香る季節であれば、まだ日中はそれほど寒くないし、ブルーシートを敷いてお酒を飲むこともできそうだ。花見と違って目に見える形の何かが近くにあるわけじゃないから、「何してるんだろう、あの人たち」と怪訝な視線を受けることもあるだろうが、いつか「お聞香」がメジャーな楽しみになるまでの辛抱だろう。どんなジャンルであれ、パイオニアというものは世間から奇異の目を向けられるものである。

つまみになる匂い

書いていてふと思い出したのだが、数年前、パリッコさんと一緒に東京の墨田区あたりで飲んでいて、よさそうな居酒屋を探して歩く途中で「あ、この匂いをつまみに酒が飲めそうですね」と話しあったのは、銭湯の脇だった。銭湯特有の、石けんの香りとお湯の匂いが混じりあったような空気が外に流れ出していて、そこに佇んで香りを楽しみながら酒を飲んだら楽しいんじゃないかと盛り上がったのだ。しかし改めて思い返してみれば、銭湯の香りで酒が進むってどういうことだ。なんだか不気味な嗜好。すでに二人とも酔っ払っていたんだろうか。
町を歩いていると色々な匂いがする。焼き鳥屋の煙、ラーメン屋の麺を茹でる匂い、吉野家の牛丼のタレの匂いもたまらない。あとそうだ、マクドナルドのポテトの匂いがしてくると頭が真っ白になるぐらいあのポテトが食べたくなる。

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“よむ"お酒

パリッコ,スズキナオ
イースト・プレス
2019-11-17

この連載について

初回を読む
パリッコ、スズキナオののんだ? のんだ!

スズキナオ /パリッコ

なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、...もっと読む

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