第20回】ウルグアイ戦から日本の守備崩壊を考える  “吉田叩き”の一歩先へ

今回のテーマは8/14に行われた日本対ウルグアイです。日本代表の守備が崩壊し、2-4と惨敗したこの試合。「簡単に裏をとられる」「クリアをミスする」など、言い訳の利かないミスを犯し続けた吉田麻也への批判が集中しています。しかし、サッカーの失点は、一人のミスだけで起こるものではありません。決定的なミスの前にも何か原因があるはずです。ここで落ち着いてウルグアイ戦での失点の原因を探り、日本の守備崩壊について考えてみましょう。

1失点目『イージーゴール』の原因を探る

キリンチャレンジカップ2013の日本代表対ウルグアイ代表は、2-4でザックジャパンが『惨敗』した。もしかすると『惨敗』は言い過ぎかもしれないけど、情けない失点の形が多く、感覚的にはそんなところだった。

「コンフェデの敗戦と同じようにやられた!」
「コンフェデから何も成長していない!」

その指摘はもっともだと思う。ただ、ザックジャパンはコンフェデレーションズカップが終わってから、何かを変える時間もなく、トレーニングする時間もなく、前日と前々日に集合していきなり試合に臨んだ。コンフェデ4試合目のような位置付けだ。
ザック自身も「今回は守備を向上させる時間がなかった」と前日会見で述べているし、コンフェデの続きのようなやられ方で大量失点を喫したこともやむを得ないだろう。あまり言うと、泣きっ面に蜂というか、すでに太っている人に「デブ!」と悪態をつくようなものだし、コンフェデショックをいつまでも引きずりたくないとは思う。4失点という結果は忘れよう。

ただ、僕は3月のヨルダン戦でダメだったことが、再び表れたのがいちばん残念だった。

振り返ると、引き分け以上でワールドカップ出場が決まるアウェーの試合で、カウンターから吉田麻也が相手の独走を許して2点目を献上。1対1の場面をファールでも止められずにアッサリと引き離された吉田のミスは大きかった。しかし当時、僕は『居酒屋サッカー論』第二回目の中で、日本は吉田以外にも7つの関所がいずれも相手を止められず、最終的に失点したと書いた。

つまり、攻撃はボールに関わった全員がプレーを成功させなければゴールは生まれないけど、守備はGKまでのポジションで、誰か一人でも相手を止めることができれば失点を免れる。そういう性質がある。

だから全員が、「もしかしたら危険かもしれない」という気持ちでチームのために献身的に、本当に集中して守備をすれば、どこかでミスが起きたり1対1でやられたりしても、何とかカバーし、瀬戸際では相手の攻撃を防ぐことができるものだ。やられてもやられても、次々と守備者が沸いてくるようなイメージというか…。たとえば南アフリカの岡田ジャパン、コンフェデのブラジル代表にはそのようなチームの一体感をベースとした頑強さがあった。

それでも防げない、どうしようもない失点は『スーパーゴール』と呼んで相手を称賛しよう。
だけど実際、そんなスーパーゴールは全体の1割程度くらいのもの。それぞれが「たぶん大丈夫だろう」と決めつけて油断しながら守備対応をすると、誰一人カバーが効かず、恥ずかしい『イージーゴール』を食らうことになる。思い返せばヨルダン戦のイージーゴールは、吉田のミスだけでなく、遠藤保仁、酒井高徳、内田篤人の緩慢な帰陣も、失点要因の一つだった。

そして今回、ウルグアイにやられた前半27分の1失点目は、あのヨルダン戦の場面を思い出してしまった。日本のスローインから狭いエリアでゴチャゴチャした状況で、岡崎慎司の強引な仕掛けを止めたゴディンが左足でクリア気味のキック。このボールに反応して裏のスペースへ飛び出したスアレスがドリブルで左サイドを駆け上がり、中央へ折り返すと、最後はフォルランが流し込んだ。

このとき、スアレスに裏を取られた吉田にはミスがあるかもしれない。それは後で取り上げたい。ただ、そもそも吉田が裏を取られただけで、イコール失点になってしまうというのはどうだろうか? まさしく『イージーゴール』だ。

特に気になるのは遠藤保仁。ゴディンが縦にボールを蹴り出した瞬間、手を上げてオフサイドアピール。そして突っ立ったまま、全く帰陣しようとしなかった。

3失点目の原因は
吉田のクリアミスだけか?

後半7分の3失点目もそう。カウンターでロデイロから右サイドのゴンサレスへパスが出た瞬間、遠藤は手を上げてオフサイドアピール。中央から飛び出したスアレスにスルーパスが出るものと予測し、食い気味に手を挙げていたが、その予測は外れて実際は右サイドへの平行パス。ゴンサレスは余裕のオンサイドだった。

一度や二度ならともかく、遠藤はいつもこんな感じでセルフジャッジして足を止めるので、もうそろそろ「オフサイドアピールして足を止めたら罰金or交代」というルールを付けて欲しいくらいだ。

ただ、3失点目に関しては、失点要因が複雑に絡んでいた。セットプレーの攻め残りで今野がポジションに戻っておらず(これも問題だが)、吉田と酒井高の間はスカーンとスペースが空いていた。また、そのような状況で、ポストプレーをするフォルランを中盤に追撃して危ないスペースをさらに広げた吉田の判断は戦術的なミスと呼べるかもしれない。そこを狙って飛び出したのがスアレスだった。

そのスアレスに対し、ボランチがディフェンスラインに入ってスペースを埋めれば良かったのだが、セルフジャッジ遠藤はオフサイドアピールをしているうちにカバーが遅れた。そして酒井高徳が背後から忍び寄るスアレスに気を取られたことで、酒井高はサイドをオーバーラップしてきた右サイドバック、M・ペレイラに寄せるのが遅れてしまう。
そしてフリーで入れたクロスに対し、吉田が言い訳の利かないクリアミスを犯す。(←ここだけを取り上げると、「吉田最低!」で終わるかもしれないが…)

さらに遠藤は、サイドに寄せた酒井高からスアレスのマークを受け取ったあとも、そのマークを1、2秒であっさりと外し、吉田のクリアミスを拾ったスアレスを『どフリー』にした。そして失点。

遠藤と長谷部誠のダブルボランチでは、どちらかが高い位置を取ったら、もう片方がバイタルエリア(センターバックの手前、ボランチとセンターバックの間のスペース)に残ってポジションを取らなければならない。遠藤は左ボランチなので、右サイドを攻められたときは長谷部がボールに近い位置へプレスに行き、遠藤がバイタルエリアに残ることになる。

この状況がザックジャパンは非常にもろい。吉田の失策ばかりがクローズアップされるが、『イージーゴール』を食らうのは、実は遠藤の守備もかなり影響を及ぼしていると思う。しかも今に始まったことではなく、欧州遠征のフランス戦やブラジル戦、ヨルダン戦、コンフェデ杯…。体感的なカウントだが、遠藤の守備面の失策は吉田と同等かそれ以上ではないかと思う。

遠藤の守備力の低さは、ザックジャパンのアキレス腱だ。「遠藤はタックル成功率がすごく高くて守備はうまい」とデータを根拠にして言われることもあるが、そこには数字のまやかしもある。たしかにタックル成功率は高いが、タックルの総数が少なく、実はチャレンジすら出来ずにアッサリと振り切られている場面、マークに付けていない場面が多い。また、そっちのほうがクリティカルなピンチを招くのだ。

正直、ここまで吉田一人が叩かれるのは違和感がある。もちろんクリアミスが多く、それが致命的であるのは反論の余地なしだが。

遠藤が球際でスアレスに好き放題にやられたとか、そんなことはいい。出来ないことは仕方がないし、遠藤には遠藤にしか出来ないことがあってメンバーに選ばれている。「相手のエースを1対1の球際で何とかしろ」なんて少しも思わない。ただ、献身的にカバーに走ることは誰にでも出来るし、遠藤のポジションは特にやらなきゃいけない。

穴だらけのバケツみたいな守備の中で、犯したミスを吉田ばかりがここまで個人攻撃で叩かれるのは、さすがに可哀想だと思う。なにせ『吉田麻也』で検索したら、第2キーワードが『ミス』『いらない』『戦犯』『不要』『下手』…。なんて有り様だ。吉田は自分の名前でネット検索を、するタイプだろうか? なんとなく、しそうな気がする。
吉田がミスをしているのは事実だけど、さすがにこの状況はアンフェアすぎると個人的には思っている。

以前、今野泰幸が、「ヤットさん(遠藤)はこのチームでは絶対的な存在。みんながリスペクトしている」と言っていた。だけど絶対的だろうと何だろうと、誰かが注意しなければならないこともある。このチームには遠藤に意見を言える人がいるのかどうか、心配だ。
これが続くのなら日本は世界の強豪とは戦えない。システムをいじるか、あるいはこのポジションで成長著しい高橋秀人をいち早く試すべきだと思っている。

なぜ、吉田はスアレスに
裏を取られてしまったのか?

セルフジャッジで足を止めるとか、そんなことはあってはならないけど、それはディフェンスの『意識』の問題なので、ワールドカップ本番に近づけば集中力が高まり、ある程度は解決するのかもしれない。(と信じたい)
もう一つ重要なのは、ディフェンス戦術の問題だ。試合後のミックスゾーンでは吉田と今野、両人がお互いのディフェンスにズレを感じており、「話し合って修正しなければいけない」と語っている。
ここで取り上げたい論点は『ラインコントロール』だ。

僕は今野とミックスゾーンで話をしたが、そこで改めて確認したのは、『ザックジャパンのラインコントロールは吉田に任されている』ということ。他のDF3人は、基本的には吉田のポジションにラインの高さを合わせることで調整している。

それを踏まえて、もう一度ラインコントロールの観点から1失点目を振り返る。なぜ、吉田はスアレスに裏を取られてしまったのか?

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居酒屋サッカー論 ~誰でもわかる深いサッカーの観方~

清水英斗

「ボールだけを見ていても、サッカーの本当の面白さはわからない!」日本代表戦や欧州サッカーなどを題材に居酒屋のサッカー談義を盛り上げる「サッカー観戦術」を解説します。「サッカー観戦力が高まる」の著者、清水英斗さんによる、テレビ中継の解説...もっと読む

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コメント

tamadam サッカー・ウルグアイ戦二あたって、吉田麻耶は不要。彼は集中力に欠けることが多くチーム全体の攻撃態勢時に一人ブレーキを掛けることがしばしば。今のチームに残る理由が見当たらない!https://t.co/Jv8JjyLp3n 約3年前 replyretweetfavorite

albatross_hi 去年から鹿島の失点が多いのも同じ理由。 約4年前 replyretweetfavorite

TAKACHAN007 何となく疑問に思ってたことが少し氷解した。 約4年前 replyretweetfavorite

kintmint 途中までだけど面白かった 約4年前 replyretweetfavorite