みんな子どものときから苦しんでいる
自閉スペクトラム症には共通点がふたつあります。
コミュニケーションが苦手であることと、こだわりが強いこと。新しい診断基準では、 このふたつが定義になっています。以前はその他にもいくつかの特徴が挙げられていたの ですが、いまは定義から外れました。そうすると、いろいろな意味でその範疇に入ってし まう人が出てきます。
コミュニケーションが苦手というのが定義ですが、自閉スペクトラム症の子どもたちの 中にも、人の気持ちが非常によくわかる子たちがいます。また、HSCには、気持ちが敏 感すぎて、言葉がうまく出ないことによるコミュニケーションの苦手さというのもありま す。このあたりが、HSCが自閉スペクトラム症と間違われてしまうところです。
ただ、「コミュニケーションが苦手かどうか」だけを見ると難しいですが、自閉スペク トラム症には他のいろいろな特徴があるので、そこでどちらかがわかります。
表情、態度、運動、そして人の目を見るか(自閉スペクトラム症の子は人の目を見ないことが多い)など、全体的にとらえれば自閉スペクトラム症というのは見ただけですぐにわかるぐらいはっきりしています。
でも、HSCの子たちはそういうことはありません。人をよく見て、感じています。
神経発達症の中にも、子どものころは普通で、大人になってから症状が出たと考えられているケースがよくありますが、発達の問題ですから、大人になって突然なるということはあり得ません。普通の生活をするには困難がある症状を抱えていると判明したのが大人になってからだったというだけで、その人自身は、子どものころから何かしら症状を抱え ていたのです。
大学を卒業して 12 年働いたあと、神経発達症と診断されたある男性は、「いやあ、小さいときもいろいろ大変でした」と言います。彼は、名門といわれる大学を出ています。子どものときからずっと勉強ができ、成績優秀でした。そのため、本人はいろいろつらい症状を抱えていても、周囲は彼が「普通のようにできない」ことや「苦しい思いをしている」ことに気づいてやれなかった、見逃していたのです。
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