<就職>
一流企業勤めか研究者の道か。
よく考えてみたらそれは「わざわざ大変な人生」を選択することだった。
大学にまともに通っていたのは、1年の夏学期くらいまでだった。
典型的なガリ勉で、真面目一辺倒の同級生のつまらなさに嫌気が募っていた。
彼らはほとんど、大学でこつこつ学んで卒業して、名の通った一流企業に就職する将来を望んでいるらしかった。
バカらしくて、付き合っていられない。
同級生に面と向かって「お前らバカじゃないの?」と言ったら、キョトンとされてしまった。
頑張って日本で一番レベルの高い大学に入学したのに、就職で他の大学を出た学生と一緒のスタートラインに並ぼうなんて……バカでしかないでしょ? と思う。彼らには通じないみたいで、呆れるしかなかった。
勉強そのものにも、僕は興味を失っていた。
前にも述べたように、東大には何の憧れもなかった。合格して東京へ行くことだけが目的だった。受験勉強という期間限定のゲームにハマっていたようなもので、合格したらもう、ゲームクリアも同然だ。
さっさと中退しても悔いはなかったのだけど、中退してからやりたいことが、当時はまだなかった。
何となく講義に出て、寮で麻雀して、アルバイトに行く。その繰り返しで、時間を無為に過ごし、「これからどうしようかな……」と悶々としている大学生活だった。
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