せーの!」でやめよう酒場の気づかい【パリッコ・スズキナオ】

恒例の振り返り対談、今回からはちょっとペースを早めてお送りします。「酒の気づかい【スズキナオ】」「マイ濃度【パリッコ】」の2本について振り返っていただくつもりが、最後はなんだかSF風になっていますが…。
なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、ぬるーく書いていくリレーエッセイです。過去の連載へはこちらから。

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“よむ”お酒(イースト・プレス)

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酒場でいちばん気を使えるタイプは?

パリ ナオさんの「酒の気づかい」の話、超うなずきました。瓶ビールの注ぎあい、一生うまくなりませんよね。

ナオ ね。例えば、目上の方に瓶を片手で持って注ぐのは、注がないより失礼になるんですかね。やらないほうがマシみたいな。

パリ ははは。どうなのかなー。プラマイゼロくらいな気はするけど。

ナオ 「スマホ見ながら片手で注いでくるヤツ vs まったく注いでこないヤツ」。これだとどっちが好きですか? 例えばどっちも会社の後輩だとして。

パリ スマホでマイナスに突入した感があるけど、実際やられたら「おもしろ!」ってなりそうだから、スマホかな。というか、僕がまったく注がないやつに近いかも。目上の人と二人で飲んでて、お互いのグラスにビールが1cmずつ残っていたとして、そろそろ注いだ方がいいのか? それともなくなった瞬間がいいのか? みたいに葛藤してることが多くて。

ナオ うんうん。

パリ すると向かいの目上の人がスッとこっちのグラスにビールを注いでくれる。

ナオ そうそう。

パリ で、「あ、じゃあ僕も!」っていうと、「いや、手酌で大丈夫だよ」って。超スマートに。それを何回も繰り返してしまう。

ナオ はいはい。ただ、自分を肯定するようだけど、酒って本当に、それぞれマイスタイルでやるのがいちばんいいじゃないですか。好きなペースで。それを重んじるならば、こっちから何かするのが邪魔なのかなと思ったり。

パリ 真理をいえばそうですよね。酒飲みみんなで「せーの!」と慣習なくしちゃうのがいちばん楽。

ナオ いちばん気を使う人は、いちばん何もしてこない人なのかもしれません。

パリ 気を使ってることにすら気づかせないタイプ。

ナオ そうそう。「気を使われてると思わせたくないのでね」と。でもそんなこと言っておいて、自分はめっちゃ使わせてしまってるんですよ。

パリ うちらはね。ダメな酔っぱらいと思われてる前提があるから。

ナオ 自分で嫌なのがさ、人の食べてるものを見ちゃうんですよね。チラチラと。で、「あ、いります?」と言わせてしまう。相当恥ずかしいのですが、見ることをやめられん!

パリ ははは。でも見るでしょ普通。というか、その人は自分のつまみを自分専用に頼んだ?

ナオ えーと、例えばおでんの玉子とか。

パリ はいはい。それぞれ好きなネタ頼んだときね。あれは自分が頼んでないもの見ちゃうな~。

ナオ その眼力でわけてもらってしまうという。「欲しいなら注文しろよ!」っていう話ですよね。

だからなんなんだゲーム

パリ 自分のグラスが空いて新しい飲み物を注文するとき、他の人のグラスの酒が少ないのを見て「頼む?」っていう人いるでしょ。あれも微妙な問題ですよね。

ナオ はい。「注文するなら一緒にするよ?」っていうニュアンスのね。

パリ 優しさであると同時に、実は早く飲めと強要もしてもいる。

ナオ そうそう! でも、そこで「僕、まだいいっす」って言う人もいます。

パリ それ! そういうやつ好きなの。かっこいいの。妙に。

ナオ ははは。自分をちゃんと持ってる。

パリ グラスがもう空だと、「頼む?」じゃなくて「何にする?」と聞かれることも多いじゃないですか。それでも断るから。

ナオ よくぞ自分を貫いた。

パリ 鋼の精神力。

ナオ カキーンと跳ね返す。

パリ で、店員さんが「頼む?」のやつのドリンク持ってきたときに頼む。その小さなインターバルを大事にしてる。

ナオ でも、それだと、店員さんからしたら「一度に言ってよ!」って思うのかもしれないすね。

パリ はは。そうそう。だから僕なんか、聞かれたら絶対に一緒に頼んじゃいますもんね。残りをグーっと飲みほして。あれの集積が泥酔につながるんだよな。

ナオ じゃあこれはどうですか?「一緒に頼みます?」「あ、はい。じゃあハイボールで」って注文は一緒のタイミングでするんだけど、そのハイボールを全然飲み始めない。自分が飲みたくなるときまで目の前に置きっぱなし。鋼のボーイ。

パリ 「変な奴と飲むことになっちゃったな~」

ナオ ってなるか。

パリ いやでも、なんかかっこよくもありますよ。

ナオ あとそうだ、缶入りのお酒って中身が見えないじゃないですか。誰かの家で宴会をしていて、それをグラスには移さず、みんなそのまま飲んでいる。冷蔵庫には豊富にまだその缶があるとする。

パリ ほう。

ナオ これは本当に仲のいい友達との場に限ってですけど、私が次の缶を取りに行こうかなというときに、けっこうさっきから酒を口に運んでいない友達の缶をパッと持ちあげて重さを確かめたら、空っぽの時がある。「こいつ、もう自分の中身は空なのに私が次を飲もうというときに合わせようとしてくれていたのか」。しかもポーカーフェイスでよう!

パリ つまり、鋼のボーイだ。

ナオ うん。いや、それか単純にもういらなかったのかな。いらなかっただけか。あれも判断が難しいんだよなー。

パリ それよりも気になるのが、ナオさんがなぜ缶を持って重さを確かめたのか。

ナオ その缶が残り半分ぐらいはある重さだったら自分の分だけ持ってくるけど、空なら、「いる?」って聞こうかなと。

パリ 優しさからか。でもそれで「人狼」みたいに、缶チューハイを使ったゲームができそうですね。読み合いの。

ナオ そうそう! 「この中に誰か、缶がもう空の人がいます」っていう。

パリ ははは。口つけて飲んでるふりして、じつは全然飲んでなかったりとか。

ナオ 名づけて「だからなんなんだゲーム」。

パリ 「空は俺だよ! ほらほら、足元フラフラでしょ?」っていう演技。

ナオ ははは。だからなんなんだ!

パリ 最終的に、「じゃあみんなで残り飲んじゃおう!」で終わる

ナオ わっはっはと。あ、あとあれは? 居酒屋でサッと飲んだ後、「今日はそこら辺のベンチでちょっとだけ飲んで解散しましょう!」と、季節の良い頃に。

パリ ありますね。あの時間好き。

ナオ それで例えば、駅のニューデイズで買い物するとき、相手の手元を「ロング缶かな? ショート缶かな?」と見てしまう。どれぐらい飲むつもりだろうかと。

パリ あー。

ナオ パリッコさんはそういうとき、たいていロングなんですよ。「ロングをダブル」の時すらあるもんな。

パリ ショートの缶チューハイって買ったことないかも。

ナオ はは。飲んでみてくださいよ! ちょうどいい量ですよ! そりゃあ、長いほうにすりゃよかったなと思う時も確かにあるけど。

パリ あ、けど、飲み会の帰り道に1缶だけチューハイ買って、部屋で名残惜しく飲んで、朝たいていちょっとだけ残ってるから、あれショートにすればいいのか。

ナオ そうですよ。お願いだから今度飲んでみてください。

パリ 承知しました。

酒カウター

ナオ あと、パリッコさんの「マイ濃度」ね。

パリ 前にもふたりで話したことありましたよね。酒算数。

ナオ 今回はちゃんと計算されてましたね。

パリ えいやっと取り組んでみました。記事の中に出てくるチューハイが濃かった大衆酒場。ホッピーのナカもコップの7分目くらいまで入ってて。

ナオ そういう店がたまにありますよね。

パリ その日は、取材のネタ探し飲みみたいな感じで、何軒か行きたかったので、「ナカのおかわり、量少なめでお願いします」と、人生初の日和った注文をしてしまいましたよ。

ナオ ははは。繊細なコントロール。

パリ お店の人も、「え? 多めじゃなくて!?」って驚いてました。

ナオ でもよく考えたら、店によってチューハイの濃度が違うってすごい話。

パリ ですよね! 同じホッピーセットなのに。

ナオ これが薬局だったらありえない。

パリ カプセルのナカね。「ここのは濃いな~」って。やばい。そういえば最近、仕事で酒好きな医師の方に話を聞く機会があったんですよ。その方が言うには、「酒は麻酔薬の一種だ」と。

ナオ 麻酔なんですね。

パリ わかりやすいたとえ話という感じですが、脳の働きを麻痺させる薬であると。その麻酔薬の量が店によって違うってんだからこわい。

ナオ 本当ですね! さらにこっちも、どれぐらいが効くかとか自分で探っていくしかないからね。薬出すほうも飲むほうもラフっていう。

パリ だからこそ、心にマイ濃度を持っておくのは重要かもしれませんね。マイ濃度感覚というか。

ナオ なるほど。それは本当にそうですね

パリ マイ濃度の倍のやつきちゃったから、次はウーロン茶で調整しよう、みたいな。

ナオ でもそのマイ濃度を何で計るかっていうと、舌の感覚ってことですよね。

パリ あとは濃度計持ち歩くしかない。酒が一杯届くごとにスポイトで吸ってレンズを覗き込み、「なるほど」と言ってから飲む。お店としてはいちばん気味が悪いタイプの変態。

ナオ はは。もう、濃度計を舌に埋め込んだほうがいいですね。

パリ 発想がこわい! 酒の度数を知るためだけに人体改造。

ナオ そんなことするぐらいなら他のことがんばれ! と。あ、スカウターみたいなのだったらどうですか。酒カウター。

パリ 酒カウターが爆発したりしてね。

ナオ ははは。チューハイが濃過ぎてね。酒カウターには他にも便利な機能があって、例えば、パッと路地を見た時に、「いいスナック、あり」とかもわかるわけ。

パリ 「ご予算:3000円」

ナオ はは。せこい機能で最高!

パリ 酒カウターほしい。

ナオ かなり欲しいですね。同時に自分の脈拍とか体温もチェックしてるから。

パリ あー!

ナオ 「飲み過ぎです。そろそろ帰ってください」と表示が出たり。いよいよとなると会社の上司の顔が表示されて。

パリ 気が滅入ってね。上司もやだけど、酔っぱらった自分自身が映ったら一番効果高いかもです。

ナオ ははは。インカメラ。「あなたは今、こうなっています」。

パリ 「うるせー!」って、ぶん投げちゃって。けっこう高かったのに。

ナオ でも酔ったら外せないようになってますから。ギリギリ締め付けてくる、「いててててて!」って。

パリ ははは。「わかったわかった!帰る帰る!」。

ナオ 帰りにコンビニで缶チューハイ買おうとしたら電流が。ビビビビビ!

パリ なんなんだよ酒カウター。

ナオ 優秀過ぎて融通がきかないという。

パリ 財布の残高も表示されてたら、もう酒なんか飲む気にもならなくなるかも。

ナオ やだなー。二日酔いでのたうちまわってる自分の動画を強引に再生してきてね。

パリ 「明日のあなたです」

ナオ はは。意地悪だなー。

パリ どちらかというとこう、奥さんが旦那さんに持たせるようなものになってきたな。

ナオ 本当ですね。

パリ フィルターがかかってて、キャバクラとかの情報は表示されませんし。

ナオ そもそも自分の視界がリアルタイムで遠隔チェックされてますし。

パリ マジで「帰ったほうがまし」となりますね。っていうかもう、耳元のスピーカーから奥さんが「そのへんにしとけば~」って言ってくる。

ナオ ははは。恐ろしい未来。星新一みたいな。

パリ 酒カウターがテーマのショートショート、読んでみたいです。

ナオ 「こんなはずじゃなかったのに……チューハイの濃度が知りたかっただけなのに……」って。

パリ 欲張りすぎたばっかりにねぇ。

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“よむ"お酒

パリッコ,スズキナオ
イースト・プレス
2019-11-17

この連載について

初回を読む
パリッコ、スズキナオののんだ? のんだ!

スズキナオ /パリッコ

なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、...もっと読む

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