クレーマー撃退法

第11回】【日本マクドナルド】現場を知り尽くした顧客第一主義

【ピンチをチャンスに変える攻めのクレーム対応③】
苦情は宝の山というが、実際にはクレームに対処するのが精いっぱいで、それを宝に換えるのは難しい。クレームから学び、ビジネスに生かしている企業の実例を紹介する。

 「ちょっと話せない?」──。2014年12月、日本マクドナルドのサラ・カサノバ社長兼CEOはある人物に電話をかけた。09年に同社のフランチャイズチェーン、クオリティフーズに出向し、そこで副社長となっていた下平篤雄氏(現日本マクドナルド副社長兼COO)だ。

 カサノバ氏とはかつて本社で一緒に働いた旧知の仲。現場の話を直接聞きたいのかもしれないと考え、下平氏は「いいよ」と二つ返事で本社に顔を出した。待っていたのは想定外の言葉だった。

 「戻ってきて、現場を見てほしい」


業績立て直しのキーマンとして本社に戻った下平篤雄副社長兼COO。
現場を歩き、客離れを招いた現場の問題点を見つけ出した。Photo by Masato Kato

 当時マクドナルドは苦境に立たされていた。10年まで伸びてきた業績が、東日本大震災の影響もあって踊り場から減少に転じ、14年に発覚した期限切れの鶏肉事件や異物混入事件が追い打ちをかけた。そんな状況下で、カサノバ氏が立て直しのキーマンとして白羽の矢を立てたのが、現場経験の豊富な下平氏だった。

 本社に戻ってまずやったのは、14~15年の事件によって客にどんな変化が起きているのかを突き止めることだった。当初、下平氏をはじめ経営陣は、マクドナルドから離れていったのは、同店をファストフードとして機能的に使う客だと考えていた。ところが徹底した客へのインタビューで判明したのは、全く逆の事実だった。離れていったのはロイヤルカスタマーの方だったのだ。

 もう一つ、気になるデータがあった。マクドナルドが客の店舗体験として重要視しているQSC(Quality=品質、Service=サービス、Cleanliness=清潔さ)に対する評価と総合満足度の数字が、10年を境に毎年少しずつ落ちてきていたのだ。

 従来マクドナルドは、クイックサービスを武器に客を集め、業績を伸ばしてきた。拡大路線を突き進む中で、新規出店への投資を優先し、既存店への投資が後回しになっていく。その結果、既存店では、混み合った店内で掃除が間に合わず、「マクドナルドってちょっと汚いよね、古くさいよね」と感じる客が増え、QSCの満足度が落ちていった。そんなときに起きた期限切れの鶏肉事件や異物混入事件によって、店が汚い=品質管理は大丈夫なのか、と不安が広がったのである。

 こうして下平氏の徹底した現場リサーチを基に、同社は立て直しの具体的施策として「ビジネスリカバリープラン」を練り上げた。

顧客の満足度をさらに高める秘策は
コミュニケーション

 同プランは「よりお客様にフォーカスしたアクション」「店舗投資の加速」「地域に特化したビジネスモデル」「コストと資源効率の改善」の四つの柱から成るが、全てを貫くのは「客の声に耳を傾けること」だった。

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週刊ダイヤモンド 2019年2/16号 [雑誌]

ダイヤモンド社,週刊ダイヤモンド編集部
ダイヤモンド社; 週刊版
2019-02-09

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店員に土下座を強要する、同僚に暴言を吐く、SNSに悪評を書き込む。そんなモンスタークレーマーが急増している。理不尽な要求を突き付けられ、精神的に参ってしまう人も少なくない。人手不足に悩む企業にとって、モンスタークレーマーは生産性を低下...もっと読む

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