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世界って本当に、とらえ方次第だなと思うんですよね。
おんなじ地球という星の上を生きていても、おんなじ日本列島という名の島を生きていても、「なにがどうしてこうなったのか」という認識が、みんな違う。
「最近は不景気だし、若者に夢も出世欲もないから稼げないのよ。若者が飲まないから飲み屋街も寂れちゃって」と言いながらタバコを吸うママの店の、そのご近所のダーツバーで若者がめっちゃ飲みまくってたり。
巨大台風を「地球温暖化のせいだ」という人もいれば、「地球温暖化が人間のせいだなんて信じないぞ。うちらアメリカは清潔だもん。なんか中国とか日本とか、アジアが頑張れば?」という大統領もいたり。
「世界の始まりにビッグバンという大爆発があった」という人もいれば、「神様が“光あれ”と言った」という人もいれば、「輪廻する世界に始まりも終わりもない」という人もいれば、「マトリックス!」という人もいる。
おんなじお空のその下に、違う認識を生きている。
2019年10月の2日から11日まで、東北を旅してきました。わたしは神奈川の県央部の、いわゆるベッドタウン、「別にここに代々住んでるわけでも住みたいわけでもないけど東京は家賃高いからまぁこの辺に住もうかな〜」という感じの人がいっぱいいる街に建てられたファミリー向け3LDKで育ちました。
だからこう、「家に代々伝わるもの」ってやつが無いんですよね。
「本家と分家」って概念もよく理解できない。お盆もやらない。 畑も、舟も、刀も、蔵も、呉服も、文書も、昔話も伝わってない。
けれど東北を旅したら、「代々伝わるもの」を家に守り、「代々伝わる物語」の中を生きている人たちに出会いました。
東北の人がみんなそうだというわけではもちろんなかったけど……自分の生まれた土地を出た結果した経験として、お話しようと思います。自分の世界認識が唯一の正しいものだと思わないために。世の中マジで広い、ってことを、わずかなビビりとゆたかな希望を持って、感じるために。
「この町で一番古い宿泊施設を教えてください」
わたしの東北旅は、東京からJRに乗って、ピンときた駅に降り立ち、地元観光協会にそう電話することの繰り返しで続いていきました。古いところに泊まれば、昔の話が聞けるし、地元の人ともつないでもらいやすいからです。
その日に降り立ったのは、山形のとある港町。前日に新潟の人から、「山形の昔の話を聞きたいならそこに行くといい」と教わったので行ってみた町です。
紹介された宿に向かい、宿帳の職業欄に「文筆業」と書きます。
「いまは何を書いていらっしゃるんですか」
一人での夕食、おかみさんが色々と話しかけてくださいます。畳敷きの食堂。地元新聞社のカレンダー。コチコチとアナログに時を刻む時計。石油ストーブ。やかん。
「東北各地をめぐりながら、男装の歴史を取材しています。戊辰戦争を男装で戦った新島八重とか……」
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