日常にささやかなSとMを

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。今回は、SMについてです。激しいプレイのイメージが先行しがちな世界ですが、そこにはSとMでも割り切れない、人の奥深さが表れているようです。

最近、SMに興味がある。行為そのものよりも、むしろ行為を通じての精神性にそそられるのだ。まあ、私自身は痛かったり汚かったり(一般的な基準という意味での痛さや汚さです)のプレイは苦手だし、そもそも惹かれないのだけど、そういった特殊な快感を求める人々に、私は心酔してしまう。

人間は突き詰めれば皆変態変人

世間では日陰の道とされ、ご自身でも特殊というか変態変人と自覚した上で、自分軸をブレさせずに堂々と歩くさまを見ていると、私の中に隠された血が騒ぐのだ。ぶっちゃけ、人間は突き詰めれば皆変態変人だと私は確信しているのだが、あからさまに白状する人や自分の中の癖を認められる人はまだ少ない。

とにかく、磁石にS極とM極があるように、人間にもSとMが共存していて、私にもそれがあるのだな、と実感する瞬間である。私がどっちのタイプというか、どっちの性質がより強いのかというのは、まだ探求中なのだけど。

ところで、セックスにおいて、男の人って大変だなと常々思っている。セックスのプロであるAV男優だって大変だろう。余談だが随分と昔に、原宿でAV女優にスカウトされたことがある。なぜ原宿でAV女優? と訝ってしまうが、その日、私は妙に露出度の高い格好をしていた(ケラリーノ・サンドロヴィッチが結成していた、かの『有頂天』のライブだったのだ)。

当時、私の胸は無駄にでかく、顔はすこぶる地味だった。つまり、胸があるからなんとか使えるかな、というレベルである。誤解のなきよう補足するが、プロ意識を持ってご活躍しているAV女優さんはこの類ではない。私が言っているのは、単発バイト感覚の使い捨て要員である。いわば、胸や尻や他の部分か、まあ、見せられる部分があって、秘部(女性器)があれば1本くらいAV作れるよね、という感じ。

片や男優はそうはいかない。女の人を感じさせて、女の人の身体をいかに美しく見せるか気を配り、さらに適切なところで射精しなければならない。プロの世界でなくとも、実生活においてだって、男の人は大変だ。

「今までおまかせして申し訳ありませんでした」

以前お付き合いしていた男性に、「たまには攻めてみて」と提案されたことがある。マンネリ打破と見せかけて、男性側が疲れたのかもしれないし、たまには違う刺激を得たいのかもしれない、と私は察したので、納得しつつやってみたのだ。

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アラフィフ作家の迷走性活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。47歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する...もっと読む

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