書籍化しました!
“よむ”お酒(イースト・プレス)
本連載『パリッコ、スズキナオののんだ? のんだ!』が本になりました。
その名も『“よむ”お酒』。
好評発売中!
ひとり飲みや、晩酌のお伴にぜひどうぞ
長く楽しく酒を飲む
「一気飲み」を見かけなくなった。人それぞれ飲める酒の量も、その人に合ったペースも違うのに、それを場のノリで強引にみんな一緒くたにしてしまい、その結果、だいたいロクでもないことになる。具合が悪くなって、重篤なことになる場合も多くて、店にも迷惑がかかったりしていいことなし。ここ10年ぐらい一気飲みの危険性が叫ばれるようになって、徐々にではあるがそういう酒の飲み方がよくないものとして認知されるようになっていった気がする。
もしかしたら私が一気飲みの横行するような場に行かないだけで、ある場所では相変わらずそういうことが続いているのかもしれないけど、時代とともに消えていくんじゃないかと思う。偉そうに言えた義理ではないが、これからお酒を飲み始めるという年齢の方などは、むしろゆっくりと、自分のちょうどいい酒のペースを慎重に探って、長く楽しく酒を飲んでいって欲しい。
注ぎ合いの儀式
一気飲みに比べると害悪という感じはだいぶ薄まるけど、瓶ビールのお酌という行為、あれも謎である。なんとなくだが、10年後にはあれも消えてるんじゃないかと思う。だが、これはちょっと難しくて、会社の上司が「〇〇君!グラスが空になってたらすぐに注がないと!」みたいに言ってくるようなそんな最悪なお酌は今すぐ消えて欲しいけど、友達と居酒屋で飲んでいて、二人で瓶ビール1本にグラス2つという感じで飲み始める際、「あ、じゃあまずはどうぞどうぞ」とか言いつつ相手のグラスにビールを注ぎ、そして私が注ぎ終わると相手が瓶を手に持って「じゃあ、お返しで、ええ」とか言って今度は私のグラスにビールを注ぎ、ようやく乾杯!というあの流れがちょっと大げさな冗談みたいな、おままごとみたいで楽しい時もある。お互い照れながらやっている。
だいたいなんなんだ。自分で自分が飲みたい分を注ぐ方が絶対いいだろ!また、私はそういう時に失敗しがちで、注ぎ過ぎてしまって泡がグラスからこぼれたりして、「ああ、ごめんごめん!」となる場合なんかも多い。というか、まず、グラスが空だったらすぐ埋めなきゃいけないという先入観が変である。歯医者の椅子の横のうがいするコップじゃないんだから。
グラス一杯のビールを飲んだらしばらく間を置き、少し料理を食べたところで空のグラスにビールを注いでもう一杯、というペースだって別にいいじゃないか。
と言いつつ、前述のとおり、まあ今の自分の気分としては、最初の1本目の瓶ビールぐらいは、ままごとをやって「はい!飲み会開始です!」という気持ちを味わうのは悪くないかな、という風で、いまだに注ぎ合いの儀式をすることはよくある。
で、最初だけそうして、「あとはもう好きに飲みましょう」のが自分としてしっくりくる流れで、気の合う酒仲間と飲む際はそうなることが多い。さらにもっと気心が知れた飲み仲間であれば、最初から「もうそういうのはいいよね」と、暗黙の了解があって、瓶ビールや日本酒を分け合う場合でも、それぞれが自分で自分の好きな分だけ注ぐ。
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