酒=タイムマシーン説【パリッコ、スズキナオ】

本連載恒例パリッコさん、スズキナオさんによる振り返り対談。そして最後にはお知らせが。
なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、ぬるーく書いていくリレーエッセイです。過去の連載へはこちらから。

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“よむ”お酒(イースト・プレス)

本連載『パリッコ、スズキナオののんだ? のんだ!』が本になりました。
その名も『“よむ”お酒』。
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「二日酔いには迎え酒」は本当?

スズキナオ(以下ナオ) これだけ続けて酒エッセイを書いてると、思いもよらない話にたどり着くことも多いですね。「あれ? 何でこんな話を書き始めてるんだろう」って。

パリッコ(以下パリ) あるある。自分で言っておいて、カニカマがこわいってなんだ、みたいな。

ナオ そうそう。だって書き出しが「カニの身にそっくりなカニカマがありますね」(※パリッコ「にんげんこわい」)ですよ。いきなり。

パリ 確かに思ったんですよ、酔っぱらった勢いで一瞬。普通ならそのまま忘れさってしまうようなことなんだけど、「書けるかも?」と頭の中にストックしておいて。エッセイって笑えるよな。

ナオ 「急にどうした!」みたいなね。

パリ 「これを書いている今、二日酔いである」(スズキナオ「二日酔いについて」)じゃねえよと。何を偉そうに。

ナオ はは。夏目漱石以来の吾輩感。もう今日原稿を書かなきゃいけないという時に二日酔いで、酒のことなど考えたくなかったんですよね。

パリ だからか、すごく真に迫ってました。

ナオ 二日酔いの気持ちは二日酔いのときに一番わかるじゃないですか。だからこのタイミングを大事にしようと思って。

パリ 話したことあるかもですが、僕、そんなにひどい二日酔いにならないほうなんですよ。気持ち悪くて頭痛くて一日潰れた、とかあんまない。

ナオ えー! そうでしたっけ! いいなー!

パリ 二日酔いの話って、酒飲みからするとあるある度高いじゃないですか。だからよく、それをテーマに原稿を書いてほしいと依頼してもらうこともあるんですが、なかなか書けない。僕にはここまですごみのある二日酔い話は書けないです。

ナオ 恐縮です。しかし、「二日酔いには迎え酒がいい」ていうのはどうなんでしょうね。都市伝説なのかなー。

パリ 迎え酒、確実に気分は良くなりません? 推奨はしませんが。

ナオ うん。正直「そんなはずないよ!」って言いたい説じゃないですか? なのにこれだけ言われ続けてるってことは、何かしら効果はあるんでしょうね。

パリ 酔っ払って二日酔いになった状態から時間を巻き戻すような感じなのかな。

ナオ はは。でもけっきょくいつかは未来に行くのか。あの恐ろしい未来に。

パリ その未来を知ってるからね。

ナオ 未来人ですね。地球が滅ぶことを知っている。

パリ そう! それを阻止するためにあれこれ手をつくすんだけど、けっきょく未来は変えられず。

ナオ それを体験できるのが二日酔い。

パリ SF体験ですね。

ナオ どんなに「恐ろしい未来が来るぞ!」って伝えても、人間たちが悔い改めないからね。人間たちっていうか自分が。

パリ 「このあとオレ、二日酔いになるんだ! 本当なんだよ!」「はいはいそうだね」

ナオ あまりにどうでもいい未来だ。

パリ けどそこで、例えば水分も多く取るように意識するとかの工夫をして、未来を変えることはできないのかな?

ナオ うんうん。「ウコンの力」を飲んだりするのも未来への祈りでしょう。

パリ そうか、あれ、祈りだ!

ナオ 酒を飲んだ後、意識がまだあれば寝る前に水をガブガブ飲んで寝ますよね。それも祈り。

パリ 「未来のオレよ、やるだけのことはやったぞ。あとはまかせた!」バタン。

ナオ 偉そうにね。

パリ で、けっきょく翌朝「バカヤロー!」って。過去の自分に。

ナオ はは。あと、いきなり未来になってるパターンもあるじゃないですか。「あれ?昨日、どうやって帰ったんだ?」みたいな。

パリ それはけっこうやってしまいます。

ナオ ジーパンのまま寝てて、ポケットの中を探るとコンビニの袋が丸めて入ってて、台所に空き缶があって、「ん? 帰りにチューハイを買ってきて飲んだのか?」みたいな。名探偵の気分。

パリ もうひとりの自分ね。ていうか、翌朝いきなり未来にいるって、完全にタイムスリップですよね。

ナオ そうそう。

パリ 過去にも未来にも行ける。酒=タイムマシーン説。

ナオ 時間旅行液。

パリ 急にまずそう!

一人で飲みに行くとすることがない

ナオ 「ひとり酒、みんな酒」という回で、酒好きとかいってるくせに本当に情けないんですが、「一人で飲みに行くとすることがない」、みたいなことを書いて、パリッコさんはそんなことないでしょう?

パリ ありますあります!

ナオ ありますか!

パリ 一人で初めて入った店で、なんていうか、すっとゾーンに入れるみたいなときあるじゃないですか。周囲の何もかもが気にならなくなって、ただただ心地いい。「あ、今この空間になじんでる〜」みたいな。逆にそうではないとき、やってることと言ったら、もうずっと、演技ですよね。

ナオ なるほど。太田和彦さんの世界というか。

パリ 短冊メニューを眺めては、ものすご〜く小さく「うんうん」。

ナオ カメラが回ってるイメージでね。

パリ 突然思い出したようにスマホを取り出してメールを確認したり。「誰もお前のこと気にしてないよ」と。

ナオ 「撮ってないですよ」と。

パリ カメラ、ない。ただ、ずっとTwitter見てるってのもなんか粋じゃない気がするし、ずっと文庫本読んでるってのは粋すぎる気がするし……何してりゃいいんだ!

ナオ はは。みんな何してんだろう。おつまみもゆっくり食べないと、けっこうすぐ終わっちゃうじゃないですか。

パリ そうなんだけど、することが食べる飲むしかないですもんね。

ナオ ねー。豆腐をわざと、あと一口で食えるのに半分にしたのをまた半分にして、折り紙を半分に折り続けるみたいな。

パリ 何しにきたんだっけ? って感じですよね。

ナオ ね。寝転がることもできない。

パリ 見たい番組も好きに見られない。

ナオ ずっと野球だし、酒追加するとお金とってくるし、帰りたーい!!

パリ ははは。何がよくて一人飲みをしてるんだろう。

ナオ そうか。パリッコさんでもそう思うのか。

パリ 認めたくないけど、要素として絶対「かっこつけてる」「悦に入ってる」はありますよね。「おれ、大人」。

ナオ ありますよ! あとはあれか、『孤独のグルメ』みたいに自分の脳内で色々喋ってるっていう人もいるのかな。あれぐらいしゃべれたらおもしろいんだろうけど、自分は頭の中が空っぽなんですよ。

パリ 普段よりさらにシーンとしてる。テンパってるといってもいい。

ナオ はは。なんかすることを探さないといけないから。「えっと、いや、これ決してつまらないんじゃないんですよ。酒好きなんで! こういう店好きですし、ただ、今特に、することないっていうか、今、なんか、暇で、いや、それが嫌いってわけではないっていうか」。

パリ 聞いてないよ! ただほら、それこそゾーンに入ったときの、「うわ、このつまみと酒のチョイス、大正解だった! 店の適度なガヤガヤも心地いい〜」みたいな、たまに最高の体験があるから。

ナオ 確かに。良かったときの良さが大きい。それこそ店選びが大事なのかもしれないですね。一人がスッとハマる店、何人かで行った方が楽しい店、両方ありそう。

パリ ですね。しかも、「前一人で来た時はあんなに居心地良かったのに……」とか、季節、時間帯、居合わせた客、無限に要素があるから。

ナオ 自分のコンディションもあるし。まぁでも、一人だともう、どうなろうといいっていうか、すぐ店を出て帰ってもいいし、迷惑じゃないなら閉店までいたっていいんだし。

パリ けっきょく、こんなに楽しい遊びはないですよ。

ナオ そうですね。スリルと、その先の「これこれ!」をまた味わいたいです。

パリ 今日もそろそろくりだすかな〜!

宇宙ハイ

パリ あ、その前に『“よむ”お酒』の告知をしないといけないんだった!

ナオ そうだ! ありがたいことに、この連載が書籍化され、2019年11月17日に発売されます。

パリ ここで我々が書いてきたエッセイが、何本だ。えーと、書き下ろしを含めて約50本収録ですって!

ナオ はは。

パリ 書いたな〜。

ナオ ぐうたらな自分にしてはよくやったよ。

パリ しかも全部酒のこと。我々「酒の穴」のエッセイ集としては初の本になりますね。もちろん合間合間の対談や、新作の対談も収録されています。また、タイトルとかデザインが良くてね。

ナオ そう、カバーイラストも可愛い!

パリ チューハイ宇宙。宇宙ハイ。

ナオ 宇宙ハイだ。その中に我々が漂いつつ寝ているようなイラストで。『ドラゴンボール』で、悟空がなんか死にかけて、液体の中で回復してるみたいなのありませんでしたっけ?

パリ ありました。コポコポいってね。

ナオ 宇宙ハイもああいうものなんじゃないでしょうか。

パリ あの液体、チューハイだったのか。

ナオ ははは。「うっめえぞ!」ってね。

パリ ぶっちゃけあそこに入れる液自体はなんでもよくて、好きな液体を入れてるだけだったら笑える。

ナオ 「どうします?」「あ、じゃあ今日はバイスサワーで」とかね。

パリ 「だいぶ寒くなってきたから、焼酎お湯割で」

ナオ 「こいつは、とびっきりあったけえぞ!」

パリ わはは。そういった気分を、現実にはね、なかなか難しいと思うけれども、宇宙ハイが表紙の『“よむ”お酒』を読んでもらえたら、少しは味わえるかもしれません。

ナオ そうですね! 晩酌のお供にでも読んでもらえたら幸いです!

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“よむ"お酒

パリッコ,スズキナオ
イースト・プレス
2019-11-17

この連載について

初回を読む
パリッコ、スズキナオののんだ? のんだ!

スズキナオ /パリッコ

なんだか気ぜわしい僕たちの毎日には、楽しくて、ちょっとホッとできる「お酒」が必要だ! 本連載はそんなお酒をこよなく愛するあまり、「酒の穴」というユニットを結成してしまったパリッコさんとスズキナオさんが、酒にまつわるアレコレをゆるーく、...もっと読む

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