第271回 放物線をつかまえて:ボールを投げる(前編)

ボールを投げると、どうして放物線を描くのか……中学生のユーリが発する質問に、あなたなら何と答えますか?

作者より更新お休みの連絡

結城浩です。

いつも応援ありがとうございます。

更新を楽しみにしてくださっているみなさまには申し訳ありませんが、 以下の更新をお休みいたします。

  • 2019年10月11日(金)
  • 2019年10月18日(金)

登場人物紹介

:数学が好きな高校生。

ユーリのいとこの中学生。 のことを《お兄ちゃん》と呼ぶ。 論理的な話は好きだが飽きっぽい。

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僕の部屋

ユーリ「どーして、ボールって放物線になんの?」

「どうして、ユーリって出し抜けに質問してくるんだろう?」

いまは土曜日。ここはの部屋。

いつものようにユーリが遊びにやってきて……開口一番《放物線》の質問をしてきたところである。

ユーリ「質問に質問で返すの?」

「そう言うユーリも質問に質問で返しているじゃないか」

ユーリ「そーゆー返しはいーから。ねーお兄ちゃん。 どーして、ボールって放物線になんの?」

「どうしてって……」

は高校生。ユーリは中学生。

ユーリのいとこだけど、 小さい頃からいっしょに遊んでいるので、のことをいつも《お兄ちゃん》と呼ぶ。

ユーリ「読者は聞き飽きてるよね、この紹介文。毎回おんなじだし。 それに『小さい頃からいっしょに遊んでる』ことと『お兄ちゃんと呼ぶ』ことの論理的関係も意味不明だし。 そんなことより質問にちゃっちゃと答えてよ、お兄ちゃん!」

「メタな発言自重。それから地の文に突っ込むなよ。放物線がどうしたって?」

ユーリ「どーして、ボールって放物線になんの? 一言で答えて!」

「ユーリが言いたいのは『ボールを投げると放物線を描いて飛ぶのはなぜか』ということだよね。いろいろ省略しすぎだろう。ボール自身は放物線にならない」

ユーリ「またそーゆー細かい突っ込み入れてくるし。そんで? ボールを投げると放物線を描いて飛ぶのはなぜかの答えは? 一言で説明して!」

「強いて一言で答えるなら、水平方向には等速直線運動をして、垂直方向には等加速度直線運動をしているからというところかな」

ユーリ「……お兄ちゃん、ありがと、やっぱり説明はいいや。じゃあね、バイバイ」

ユーリは、わざとらしく帰るそぶりを見せる。

「ちょっと待った!」

は、大げさに引き留める。

ユーリ「そんな専門用語をぽんぽん出されてもわかんないよ」

「いいや、ユーリならわかるよ。ユーリは自分の能力にまだ気づいてないだけだ」

ユーリ「何その経験豊かな指導者口調」

「だってユーリは微分も積分も基本的なことはわかっているんだから、ボールを投げたときに放物線を描くことはすぐにわかるよ。復習も兼ねて話そうか」

ユーリ「ちなみにここまでのやりとりはテンプレ」

「メタな発言自重。話すのやめようか」

ユーリ「話して話して!」

【宣伝タイム】

テトラ「ユーリちゃんと先輩が微分を学ぶ対話は『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて に、積分については 『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて に収録されています!」

 

放物線

「真面目に話そう。ユーリは『ボールを投げると放物線を描いて飛ぶのはなぜか』という疑問を出してきた」

ユーリ「うん」

「でも、ユーリはこのこと……つまり《投げたボールが放物線を描いて飛ぶ》ということを知ってるよね。それなのに、どうしてまた改めて疑問に思ったんだろう」

ユーリ「いろいろ考えているうちに、何となく『あれ?』って思った」

「いや、その『いろいろ考えて』のところを具体的に聞きたいんだけど」

ユーリ「なんで?」

「だって、何か気になることがあったから疑問が出てきたんだよね。だったら、それに沿って話をした方がスムーズになりそう」

ユーリ「ほほー……あのね。ボールを投げたら放物線になる……放物線を描いて飛ぶってゆーのは、わかるの。 でもボールって、強く投げても弱く投げてもいいじゃん? それなのに、どんな強さで投げても放物線になるんでしょ? だとしたら不思議」

「なるほど」

ユーリ「それからね、ボールって高く投げたり低く投げたりするじゃん。ほら、キャッチボールで角度をうまいこと調節して、 ぴったり相手の手元に届くように」

「ユーリ、キャッチボールなんて誰とやるんだ? ははーん……」

ユーリ「センサク禁止! 真面目に話してんだから」

「はいはい」

ユーリ「でね、どんな角度で投げても放物線になるんでしょ? それも不思議」

「なるほどなあ」

ユーリ「そんな感じかなー。で? 答えは?」

「うん、順序立てて考えてみよう。最初に放物線とはどんな形かというところを考えていこう」

ユーリ「放物線とはどんな形か……ボール投げたときの形?」

「いやいや、放物線のことをそう定義しちゃうと、論理的には話が終わってしまう。ボールを投げたときにボールが描く形のことを放物線と呼ぶことにしたら、 ボールが実際にはどんな動きをしてもそれは放物線になっちゃうよね。定義上」

ユーリ「あはは! たーしかに! あはは!」

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数学青春物語「数学ガール」の女子高生たちが数学トークをする楽しい読み物です。中学生や高校生の数学を題材に、 数学のおもしろさと学ぶよろこびを味わってください。本シリーズはすでに11巻も書籍化されている大人気連載です。 (毎週金曜日更新)

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コメント

chibio6 最初に放物線が出てきたのは台車と打点テープの実験で、横軸が時間で縦軸が移動距離… https://t.co/bAHL89XLTX 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

inaba_darkfox 2次曲線、3次以上と違って色んな名前が付いてるから面白いよね 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

orions3434 第271回 放物線をつかまえて、はすごくいい所で終わりましたね続きが気になるー(笑)。プロットって持ち出されてついて行くユーリちゃん賢い! 結城浩 @hyuki | 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

Monallowtail 久々にユーリに会った😌 今思うと、放物線って安定な図形だからよく現れるんですか… https://t.co/eETgDtdZ4Z 約1ヶ月前 replyretweetfavorite