これから、いくつもの波乱があるだろう」|気宇壮大(九) 2

豪腕作家として知られる伊東潤が描く、大隈重信の成長譚!
早稲田大学の創始者で、内閣総理大臣を2度務めた大隈重信という男は
どのような人物だったのか?
幕末の佐賀藩に生まれ、
明治期に藩閥政治から立憲・政党政治への道筋を切り拓いた男の思想と生涯とは。
青年期から最晩年まで、
「走る人」「闘う人」「創る人」「聞く人」として駆け抜けた、
令和版大隈像をお楽しみください。

「義祭同盟には、殿の警固役が務まるほど剣の腕が立つ者はいないだろう」

 大隈が遠慮がちに言う。

「空閑次郎八がおります」

 神陽が膝を打たんばかりに言う。

「ああ、そうだったな。空閑なら腕が立つ。どうだ空閑、江戸に行ってみないか」

 空閑が顔を紅潮させながら言う。

「喜んでお引き受けいたします。しかし決めるのは、われらではなく重役の面々ではありませんか」

「二郎、何とかならぬか」と神陽が弟を促す。

「お任せ下さい。うまく潜り込ませます」

 それで空閑の江戸行きは決まったも同然になった。

「それで—」

 中野が続ける。

「これを機に幕府の政治力は弱まるでしょう。もはや力で諸大名を抑えていくことはできません。となれば天皇と朝廷を中心にした国家体制へと移行する好機です」

「王政復古か」

 神陽が感慨深そうに言う。

「王政復古を成し遂げる日が近づいている。長らく続いた武士の時代を終わらせ、楠公が夢みた天皇を中心とした国家を打ち立てるのだ」

 神陽の言葉に、そこにいた者たちがうなずく。

 —では、幕府から天皇を中心にした国家に替われば、列強と伍していける強国になり得るのか。

 大隈はそこに疑問を抱いた。義祭同盟の思想はあくまで天皇至上主義の尊皇だが、それが富国強兵策とどう結び付いていくのか、大隈には分からないからだ。

「先生、問うてもよろしいですか」

 神陽がうなずいたので、大隈はその疑問を口にした。

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威風堂々 幕末佐賀風雲録

伊東潤

豪腕作家として知られる伊東潤が描く、大隈重信の成長譚! 早稲田大学の創始者で、内閣総理大臣を2度務めた大隈重信という男は どのような人物だったのか? 幕末の佐賀藩に生まれ、 明治期に藩閥政治から立憲・政党政治への道筋を切...もっと読む

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kumabouroMM https://t.co/waTVbRcjTR 更新日でした~ (曜日感覚が無いとうっかり忘れてしまう、、、) 19日前 replyretweetfavorite