障害児だった私は時折、障害を持つお子さんのママから質問を受ける。 これらのいくつかの話を座談会という設定でまとめてみる……。よっ!
「千夏さんは結婚し、出産し、お子さんを育てた。私から見れば、あの時分は制度もなかっただろうし、子育ては苦労の連続だったと思うんですが……」 と四〇歳半ばの髪を束ねた女性は聞く。
「確かに子育ては大変やったけど楽しかった。まっ、過ぎたから楽しかったなと思えるのかもしれへんな。子育てはやっぱりしんどいよね。 うちの親もきっと私を育てる中では、焦りや心配は多かったと思う。だから、専門機関(訓練を主にする施設)に預けた方がいいのかなと迷ったこともあったんだと。でも子供は、そんな親の不安や期待なんて知る由もない。私もそうだったけど。遊ぶことしか考えていない。子供はみんな子ども」
「子どもは子ども…ですよね。でも、うちは障害が重いので、いつも良くないほうに予測しちゃう」 「それもわかります。私も夫の癌が進行した時には、希望を持ちながらも、最悪な事態になっても、すぐ次の手を打てるように絶えず考えて絶えず動いてた」 命を託されている毎日は恐怖だった。部屋の片隅で膝を抱え、人差し指を噛み、うめき声を押し殺した。だから彼女たちに「明るく考えて」なんて薄っぺらい言葉は履けない。 重たい空気が漂う。その時 「すみません。話が変わるんですが、うちの子は小五で来年の修学旅行をどうしようかと」 ピンクのTシャツとジーンズ姿のママのお悩みごとが来た。
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