美をさがし求めるのが生業である。
こんな、美しいものをみつけた。
内から湧き出る「つくりたい欲求」と、内容をより十全に表現するための手法・構成を考えつくす知性が同居した、美術作家・菅実花の生み出すアート。
気鋭の美術作家、平野啓一郎とのコラボを始める
この9月に始動したばかりというのに、早くも盛り上がりを見せているのが、平野啓一郎の新聞連載小説『本心』だ。
「——母を作ってほしいんです。」
最愛の母を亡くした息子が、仮想現実で再現された母親と暮らす中で見えてくる「人の本心」とは……。
時事的な関心と普遍的な問題をともに含むテーマ設定、読者を引き込む力強いストーリーテリングと豊かな文学表現を両立させた文体、主人公・朔也をはじめとする登場人物たちの微細な感情の揺れ動き。日々更新されていく小説の読みどころは多彩で、作品世界にすでにはまり込んでしまった読者も多数いる様子。
11月に福山雅治主演・石田ゆり子共演による映画が公開される「マチネの終わりに」の原作小説も、初出は毎日新聞での連載だった。現代において「恋愛」や「恋愛小説」は可能かを探るストーリーは連載中から大きな話題を呼んで、連載終了時にはそれを嘆く「マチネロス」なる言葉まで生まれたのだった。
それに続く平野啓一郎の新聞連載小説となる今作への期待は、日を追うごとに高まる一方である。
今回はさらに、新聞連載小説に付きものの「挿絵」にも要注目だ。担当しているのは、美術作家の菅実花。現代アートの世界で確固たる地歩を築いているアーティストである。
彼女が最初に注目を浴びたのは、2014年に始めたアートプロジェクト「Do Lovedolls Dream of Babies?(ラブドールは胎児の夢を見るか?)」だった。
等身大の愛玩人形=ラブドールが妊娠したら? という想定のもとにつくられたオブジェを写真に撮ってある。インパクトがとにかく強烈なこの作品で、菅は「どこから・どこまでが人間か」という人間の条件を問うた。
2019年6~7月には、原爆の図 丸木美術館での個展「The Ghost in the Doll(人形の中の幽霊)」で新作を発表。
リボーンドールと呼ばれる精巧な乳幼児型人形を、19世紀半ばに用いられた湿板写真技法によって撮影したもので、ここで菅は「魂は写すことができるだろうか?」という問いに挑んだ。
斬新かつ堅固なコンセプトのもと、緻密に計算された造形を生み出す菅実花が、このたび何ゆえ平野作品と伴走することとなったのか。心境と方法について、ご本人に話を聞けた。
20世紀に生まれたコラージュの技法を採用
『本心』を連載している紙面で菅実花さんは、平野啓一郎の文章と並び立つようにして、毎回コラージュ作品を掲載している。
西日本新聞HPより
コラージュとは、さまざまなところから持ち寄った既存のイメージを貼り合わせて、ひとつの画面を構成するもの。
「平野啓一郎さんのこれまでの作品世界や今作のテーマが、コラージュの手法にうまく合いそうだと思いました」
と菅さんは言う。平野作品とコラージュの相性のよさとはどの辺りを指す?