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抱いている抱かれているが反転し生ハムメロンはメロン生ハムに
異業種交流会には純人間、不純人間、半人半獣、半獣半人、の四種が参加していた。
半人半獣は二体だけで、彼とわたしは目が合って自然に近づいた。
半人半獣にとって、今夜は下弦の月の、我々の獣が解放される夜だ。
我々は、一夜だけの相手と愛を交わす。
二人は異業種交流会の行われていたビルを出て、半人半獣がドライバーである、タイヤが革製のタクシーを止めて半人半獣専用ホテルに向かう。
ドアマンがシッポを出しているのですぐ分かる。
ルームサービスでワインと生ハムメロンを頼む。
「生ハムメロンは半人半獣みたいだね」
「動物と植物が合体していますね」
二人は、日本のお盆のきゅうりの馬やナスの牛のように、生ハムメロンをナイフとスプーンで細工し出した。二頭とも、伊勢神宮で見た神馬に似ている。
そう見ていると、ますますそうなる。
やがて二頭は体積を増し、二人が乗れるほどの大きさになった。
二人は生ハムメロンの神馬に乗り、浮き上がる。
神話の国に帰ってゆく。
指で押しどこまでも指が潜るならそのメロンはきみを愛している
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