以前、多様性の国マレーシアでは「正解が一つではない」「正義も一つではない」というお話しをしました。宗教や人種ごとに正解が複数あります。小さい頃から多文化に囲まれて育ち、「相手のことは理解できない、でも尊重する」と学んでいくのでしょう。
私の仮説ですが、これはマレーシアに複数語話者が多いことと無関係ではないと思います。
相手のことは理解できないけれども、マレーシアでは他の文化を理解しようとする人が尊重されます。
2017年にマレーシア航空が作った「A Truly Malaysian greetings」はネットで大いにバズりました。これは、マレー系やインド系の人々が、流暢な中国語でお祝いのメッセージを言う「中華系が出てこない中国正月のお祝い動画」でした。「マレーシアらしい」ということで、話題になりました。
日本語を知るマレーシア人たち
マレーシアには日本が大好きな人が多いです。日本語が堪能な人も結構います。私は日本語のオンラインメディアをやっていますが、今読者の1割ほどが日本語の読めるマレーシア人。執筆陣にも3人ほどいます。
日本を理解するためには日本語が必要だと知っているのでしょう。マレーシア在住7年でメディア事業を運営する中村芙美子さんは、こう言ってます。
確かに、「一つ、よろしくたのむよ」とかって日本語っぽくて、どうにも訳せない言葉なんです。
マレーシアの人たちが語学に堪能なわけ
マレーシアはバイリンガル・トリリンガルが当たり前の国。
多くのマレーシア人が2カ国語以上の言葉を話します。3カ国語話せる人の割合もかなり多く、英語能力一つとっても、アジアではフィリピン、シンガポールに並んで高いようです。
例えば公立の小学校や幼稚園でも、複数語を教えることがほとんどです。小学校から、アラビア語や日本語をやる子もいます。
息子が通ったインターナショナルスクールでも、英語と中国語、マレー語の3カ国語を教えていました。
マレーシア人はときに「語学の天才」などと呼ばれます。
かつてのマラッカ王国では84もの言語が話されていたそうです。
もちろん語学の能力には個人差があり、読めるけど書けない、書けないけど話せる、などまちまちです。友人のマレー系小学生は、英語が堪能ですが、家では母語のマレー語を話します。アラビア語と日本語も習っています。
言語教育についてはいつも議論になります。国語であるマレー語をもっと教えるべきだとか、もうマレー語ではなくて英語の時代だとか。しかし、「一つの言語でいいのでは」と言う人はいないのです。
一つの言語では知り得ない世界がある
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