梨・なし——バラ科の果樹。晩春に花をつけ、秋口に収穫される。原産は中国の説が有力だが、日本における歴史も古く、弥生時代から食用されていた。「ナシ=無し」は縁起が悪いとして、「ありの実」という別名もある。
まだまだ残暑と思いつつ、八百屋の店先を物色すると、おや、もうイチジクが並んでいる。桃、ブドウ、柿、りんご……秋の果物は色々ありますが、何といっても梨。私は梨が大好きです。もうね、果物の中で一番好き。子供の頃から好きで、今も好き。リンゴや柿の皮を剥くのはちょっと面倒臭く感じるのに、なぜか梨だけは、全然億劫じゃない。むしろ剥いてて楽しい。好物とはこういうものを言うのだと思います。
なし、ナシ、梨。まず名前が良いですね、サッパリしてて。ゴテゴテしてなくて。「好きな果物は?」と聞かれて、「ナシ!」と答える度に、いい名前だなと思う。
見た目も、果物としてはちょっと反則なくらいシブい。色が地味だし、形もごろっとしてて、全然オシャレじゃない。オシャレじゃないけど、イヤミがなくて好ましい。
それに、大概の果物って、もったいぶったところがあるでしょ、ちょっと押しただけで潰れたり、傷がついたり、大事にしてねと言わんばかり。その点、梨は多少手荒く扱っても大丈夫。私みたいなガサツな人間にピッタリなんですよ。触っても全然ベタベタしない、ざらっとしてて、いい友達になれそう。
そして、あの味、あの歯ざわり。たまりませんね。甘いんだけれども、クドさとは無縁。シャクシャク噛み砕いて、喉越しもすっきり。食べても食べても食べ飽きない。試したことはないけど、三個くらいは余裕でイケます。
かく梨好きの私ですが、最近ちょっと、浮気をしてしまいました。