「中の人」が人気者になる必要はない
私がSNS担当者に着任した当初、最も悩んだのは「どの路線でいくか?」ということでした。
テクニック的なことはある程度、身についていましたので、フォロワーを集めたり、「いいね」を獲得する基本的な運用はすぐにでも実施することができます。しかし、それでは他のアカウントと同じになってしまう。
まず、ゴールはあくまで「来館」ということに絞りました。見てもらうだけ、「いいね」をもらうだけでは意味がありません。森美術館に来てもらうには、どの路線でいけばいいのか? その「方針決め」が肝心です。
有名な企業アカウントのように、自由にやってみようと研究したこともありました。当時、美術館のSNSアカウントで、「中の人」がフランクな調子でつぶやくアカウントはなかったので、他との差別化になるだろうと思ったのです。
しかし、いまではその方針をとらないでよかったと、心底思っています。
ツイッターで話題を獲得していく有名企業の「中の人」たちのやり方を否定しているわけではありません。その言動が「Yahoo!ニュース」に載ったり、ツイッターのトレンドに上がったり、とてつもない影響力があると思っています。ただ、おそらくそのアカウントのフォロワーは、企業のファンでもあるのですが、どちらかといえば「中の人」のファンだと思うのです。有名人をフォローしているのと同じような感覚です。
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