SNSの「生中継」はフットワークが命
森美術館では、アーティストを招いたトークイベントや、ギャラリートークなど、展覧会に関するイベントを定期的に行っています。
ギャラリートークは、アーティストやキュレーターがお客さんと館内を回りながら、作品の見どころを解説していくため、会場のキャパシティの都合上、実際に参加できる人数がどうしても限られてしまいます。同様に、トークセッションや、ワークショップでも制約があります。本当は来たかったけれど、スケジュールの都合で断念したお客さんもたくさんいらっしゃるでしょう。
そこで私は、インターネットを通じてイベントを「生中継」する試みを、機会があれば行っています。担当キュレーターが展示の解説をしたり、アーティストが自分の作品をその場で語ってくれたりという、とてもぜいたくな機会なのに、それを体験できるのが数十人ではもったいないと思ったからです。
生中継の際は、次の写真のような「撮影キット」を使って、自ら撮影と配信を同時に行っています。用意するのは、スマートフォン、音声を拾うためのインカムマイク、そしてスマートフォンを固定できるもの。たったこれだけです。
イベントの生中継で使用した道具
それだけですか、と驚かれることがありますが、これだけで十分です。オフィシャルな資料として残す記録映像なら、本格的な4K動画を撮れるカメラが必要かもしれませんが、生中継はフットワークが命です。何かあったらすぐに駆けつけて、その場で配信するためには、機材はシンプルであるほどいいでしょう。
特にギャラリートークは、解説者を追いかけないといけないですし、他のお客さんの邪魔になってもいけません。なので、軽いことはかなり重要です。そもそも視聴者はこの場合、高画質な映像を求めているわけではありません。トークを漏れなくお伝えすることが最優先です。