日本初の試み「#empty」の持つ可能性
世界の美術館で広がっている「#empty(空っぽ)」という試みをご存じでしょうか? 閉館後など、お客さんのいない美術館にインスタグラマーが集まり、展示風景を自由に撮影するイベントです。
「#empty」は、2013年、メトロポリタン美術館で始まりました。以降、グッゲンハイム美術館(アメリカ・ニューヨーク)、エルミタージュ美術館(ロシア・サンクトペテルブルク)など、世界中の美術館で開催されています。
日本で「#empty」を開催したのは、森美術館が初めてです。2017年の「N・S・ハルシャ展」で、19名のインスタグラマーに撮影を楽しんでもらいました。
ここで重要なのは、「#empty」はビジネス目的ではない、ということです。まさに、新しい美術館の可能性を探る実験でした。実験ですから、インスタグラマーのみなさんに楽しんでもらうことが主目的で、宣伝してもらおうとか、話題にしてもらおうとか、そういったことは考えないようにしました。
もちろん、ギャランティもありません。作品保護の共有と、イベントのハッシュタグをつけること以外は自由です。
あくまで「自由に撮影を楽しんでください」というスタンスを貫いています。そうでないと宣伝・広告感が漂ってしまい、展覧会にとっても、インスタグラマーのみなさんにとっても、お互いのパフォーマンスが発揮できないからです。
たまにインスタグラムの投稿で、「#PR」というタグがついているのを見たことはありませんか? 「依頼を受けて、PRで投稿していますよ」というお知らせです。森美術館で行った「#empty」は、インフルエンサー・マーケティングのイベントではないので、この「#PR」タグもつけなくてよい自由なイベントです。
企業に頼まれてビジネスで投稿するのと、自分が好きで、いいと思ったから投稿するのでは、モチベーションがまったく違うでしょう。写真のクオリティも大きく変わってくる気がします。
このイベントで、アイデアに富んだ、素晴らしい写真がたくさん誕生しました。自分たちには思いもつかない写真がいくつもアップされています。インスタグラムのハッシュタグ「#emptymoriartmuseum」で見ることができますので、ぜひ検索してみてください。
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