さよなら、僕のスクールガール・コンプレックス

「彼女写真」の連載でおなじみの写真家・青山裕企さんの代表作『スクールガール・コンプレックス』を原案とした映画が『スクールガール・コンプレックス~放送部篇』がついに公開。それを記念して、映画のパンフレットによせた青山さんのエッセイを、cakesでも特別公開いたします。思春期の青山さんが女子に対して感じていたコンプレックスをかたちにしたという同写真集。その思いのたけを、青山さんが綴ります。cakesでは、もうひとつの代表作「ソラリーマン」シリーズについてのインタビューも同時公開。あわせてお楽しみください。

僕は、「むっつり」していました。

共学だった高校生の僕は、クラスの女の子をいやらしい目線で見ていました。
そのことを僕は、誰にも(親しい友達にも)言えませんでした。秘密にしていました。
一方で僕は、女の子をとても神聖なる気持ちでも見ていました。
純真無垢で、天真爛漫で、まるでヒロインみたいな存在であってほしいと思っていたんです。

大人になってみると分かるのですが、このような女の子に対する見方って、いたって正常で健全な、思春期の男の子のものなんです。
当時は、自分だけおかしいんじゃないかと悩んだりしたけれど。
もしも、女の子と少しでも上手に関わることが出来ていたならば、心の拗れは緩んでいったのでしょうが、僕の女性観はどんどん現実から離れ、期待と妄想ばかりが膨らんでしまったので、だんだん女性の実情を知るにつれて、僕はファンタジーの崩壊を目の当たりにしてしまったんです。
~圧倒的な現実。青春の終焉。~

でもそれって、女性に何の罪もありません。
僕らが自分勝手に妄想して、自分勝手に壊れてしまったと叫んで、なんて身勝手なことでしょう。
まあ、青春はいつだって、身勝手なものです。


突然ですが、人生って、なかなかうまくいくもんじゃないですよね。
恋愛もそうでしょうし、なぜなら相手がいるからなんですね。ひとりで生きているわけじゃないという、当たり前。
自分ではコントロールのしようがない世界の揺れ動きと、自分の気持ちや行動がシンクロ(共鳴)するとは限らない。
どころか、大抵ズレるわけです。そのズレが、物語を生むんです。人生を進めてくれるんです。

映画では、女の子同士の色恋感情のすれ違いを描いていますが、写真集では、女の子同士のからだの密着を写し出しています。
密着してはいるんですが、顔は見えていない。だから、ふたりは何を考えているか、分からない。
好きなのか、本当は嫌いなのに無理をしているのか、分からない。分かれない。
~女の子は謎。女の子同士はもっと謎。~

女子校という、女の子とまるで縁のなかった僕にとって、謎であり、夢である空間を、謎のまま、夢のまま、描きたかったんです。映画と写真集は、そう言った意味で連動しています。
映画のほうが、爽やかで、キュンと来る、良い青春していると思います。
青春の意地悪さ。すれ違い。共感。汗と涙。美しさ。

……いいですよね。僕の青春になかった、全てが詰まっているんです。
はじめて映画を見たときに、目映いぐらいに青春している女の子たちをみて、僕は、もう本当に遠い存在に感じました。触れられるかどうか以前に、僕と同じ世界に存在しているのかどうかすら、危うくなってくるぐらいのファンタジーであると、思いました。
それでいて、圧倒的にリアルでした。やっぱあるんだ、こうゆう世界って。知られざる女子校という空間のなかに……。

実際は、もっと汚らしく汚らわしいと思うんです。女の子だって、欲深い人間ですから。
だけど、誰しも表裏一体合わせて人間なのであって、汚らしさと純真さって、実は隣り合わせなんだよねってことを、映画と写真集を合わせ見ることで、感じていただけると嬉しいなって、思います。


僕が女の子に対して抱いている根本的なイメージは、「机の上では仲良く笑い合っているのに、下ではもしかしたら足を踏み合ってるのかもしれないな」といった、歪んだものです。
写真集のパート1,2と3は、実は描いているものが、男の子が女の子に対して抱いていたコンプレックス(劣等感)から、女の子同士のコンプレックス(複雑)な感情へと、変化しています。

僕も大人になり、女の子の謎を少しずつ知ったつもりになり、スクールガール・コンプレックスが解消されてきている、ということなのかもしれません。
女の子同士の仲睦まじさを見ていると、まるで娘たちを微笑ましく見ている父親のような気持ちになることも、ふとあったりします。
~さよなら、僕のスクールガール・コンプレックス~

あくまで僕のコンプレックスからはじまった作品ですが、それは皆によくあるコンプレックスであって、
男の子だけじゃなくて、女の子も感じるコンプレックスが存在して、
それはすなわち青春の意地悪さであるけれど、とても輝かしくて、二度と戻らない。儚くも、美しい。
やっぱり女の子を信じてみようって、心の底から思えました。映画になって、本当に良かったです。


本書(映画パンフレット)は、ナンバリングを3.14(π)とさせていただきました。
写真集のパート3(女子校)から、ちょっとはみ出した女の子同士の青春を描いているからです。
そしてその青春は、π=3.1415926535897932384626433・・・そう、割り切れないのです。

割り切れないから、分かりたい—。
女の子って、信じられないほど、可愛いですね。

 

映画『スクールガール・コンプレックス〜放送部篇〜』

8月17日(土)〜シネ・リーブル池袋ほか、全国で公開中!
公式サイト

映画パンフレット+映画主題歌CD「秘密の時間」(さよならポニーテール)のスペシャルセットがヴィレッジヴァンガードで限定発売中

 

ケイクス

この連載について

カメラで日本をちょっと明るく

青山裕企

cakesオープン当初から「彼女写真」を連載している青山裕企さんは、代表作『スクールガール・コンプレックス』が映画になるなど、ますます大忙し。そんな青山さんに、カメラマンとしての原点となったサラリーマンがジャンプした瞬間を収めた写真集...もっと読む

関連記事

関連キーワード

コメント

yukiao 【text01 2013.10】 以前記したテキストを定期的にピックアップしていきます。 8ヶ月前 replyretweetfavorite