着物の意匠は身分で変わる
さらに歩を進めていくと、「8室」と掲示してある大きな展示空間に出た。この部屋でまず目に入るのは、広げて展示された、色とりどりの着物だ。
前回、舞楽という伝統と格式ある世界で用いる衣装を眺めていたせいか、ここにあるものはずいぶん軽やかに見える。
「安土桃山~江戸時代にかけての、暮らしの調度や書画を展示する部屋になっています。当時の人々の生活に即したものが多いので、ぐっと心安く感じられるかもしれませんね」
こうして見ると、和服ってほんとうに華やか。「着飾る」とはまさにこのことだって感じがする。
「たしかにそうですね。とりわけ江戸時代の衣服は、意匠が凝らされていて見応えありです。社会が安定してくると、衣食住にかかわるものはどんどん洗練されていくものです。ただ、同じ江戸のものといっても、身分によって、好みや雰囲気は、かなり違っていたようですよ」
身分、というと、町民と武家では趣味がぜんぜん違うとか? 時代劇なんかの影響かもしれないけれど、町民は明るく開放的、武家の奥方は規律を重んじ凛として、「お家」を守るため苦心しているイメージ。