第9章それは「男の美学」なのか?|8反逆の魅惑

「カッコいい」の悪用に対しては、私たちはそれを「カッコよくない」、あるいは「カッコ悪い」とキッパリと言わねばならない局面があるだろうーー。平野啓一郎が、小説を除いて、ここ十年間で最も書きたかった『「カッコいい」とは何か』。7月16日発売の新書を全編連載。 「カッコいい」を考えることは、「いかに生きるべきか」を考えることだ。(平日毎日更新)


8 反逆の魅惑


反体制、反ブルジョワのナチス

 連続性と断絶、類似性と差異への注目は、「カッコいい」という体感の悪用と善用の歴史を再検証させるであろう。

 ナチスに関連づけてもう一点、指摘するならば、反体制、反ブルジョワ社会という態度にも言える。

「アンドレイア」の②にあった通り、古代ギリシア以来、正義と社会とが乖離しているように見える時、体制に反抗するのは「男らしい」勇気と賞賛されてきた。その正義の根拠が自然なのか、神なのか、形而上学なのかの違いはあろうが、ミルトンのサタン以来、ダンディズムを経て、モッズに至るまで、そうした「カッコよさ」の歴史は、脈々と受け継がれている。

 ところで、ナチスがあれほどまでに民衆の支持を得たのは、反共姿勢や経済危機から救ってくれるという期待もさることながら、一つには、腐敗したブルジョワ社会と、保守的なキリスト教道徳への徹底的な批判の故だった。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

コルク

この連載について

初回を読む
カッコいい」とは何か

平野啓一郎

『マチネの終わりに』『ある男』を発表してきた平野啓一郎が、小説を除いて、ここ十年間で最も書きたかった『「カッコいい」とは何か』。7月16日発売の新書を全編連載。 「カッコいい」を考えることは「いかに生きるべきか」を考えることだ。(平日...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません