味の表現は難しい
いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。
先日、林家きく麿の落語を見ていてわかったのですが、今、「優しい味」って表現するのが流行ってるんですね。
気をつけてテレビの食レポを見ていると、本当によく「優しい味!」ってコメントしています。たぶん想像するに、「美味しい」だけだとダメだし、「口に入れた瞬間、芳醇な香りが抜けていって……」みたいな表現はすぐには出てこないし、そんな時に「優しい味」って言っておけば無難に場がまとまるのでしょう。
でも、「味の表現」って難しいですよね。僕も飲食店を経営していて、日々「美味しいって何だろう?」って考えます。
「人が美味しいと感じること」に関してこんな調査があります。例えば、人があるワインを美味しいと感じている時、実はワインそのものの味わいの美味しさは3割しか関係していないそうです。あと3割は、「これはブルゴーニュの特級畑のすごく良い年のピノノワールで」といった「物語」や「ブランド」。そして残りの4割は「雰囲気」らしいんです。
例えば、静かなレストランでお洒落して大好きな人と飲むっていうのが、美味しいに4割の効果をもたらしているということなんです。そう言われてみれば「おまえがそんなこと言うから飯がまずくなった」なんて言いますよね。接待の高い酒は美味しくない、その後の1人の安居酒屋の酒が美味しいとも言いますし。
ほんと、「美味しい」って難しいんです。その人が普段どんな食生活をしているかっていうのも大きいし、お酒のような嗜好品は、金額や経験値で「美味しい」と感じるところも変わってきます。
美味しいの反対の言葉、「まずい」についてもよく考えるんですね。今はインターネットで誰でも評価できるから、友人のレストランに対して「まずい」なんて書いてあると、この評価している人は普段どんなお店に行ってるんだろうってチェックしてしまいます。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。