人は元通りにならないようにできている
一時的にイヤな気分になったぐらいなら、生活や環境はそれほど変わりません。
でも、うつまで進行すると、普通は回復するまでに年単位の時間がかかります。
その間に多くの人が、休職したり、復職したり、違う会社に移ったり、同僚や家族との関係が変わったり、いろいろなことがあります。
そういうこともあって、うつになった人の多くが「元の自分に戻りたい」「まだまだ元の自分じゃない」と言います。
でも、そういう思いとはスッパリ縁を切ってほしいのです。
そもそも元の自分になど、戻れるわけがありません。
それはどんな人でも同じです。
うつになったのが34歳だったとしますよね。治ったのが36歳で、2年かかったとします。あなたは2年分年を取っています。今のあなたと昨日のあなたと去年のあなたは違いますよね。うつになろうがなるまいが、違うのです。
2時間前はお腹が空いていたかもしれないけれど、今はお腹がいっぱい。それと一緒で、元通りにはなりません。
うつになって、今の自分は前の自分よりも劣っているという考えがあるから「戻りたい」という言葉が出るのだと思いますが、それはまったく違います。逆に、うつになったからこそわかることもあります。
うつになるということは、自分の弱さを受け止められるようになったということでもあり、それが強みになっていくのです。人の弱さや失敗も受け止められるようになり、人を思いやれる人になって、人間性がどんどん深まっていくということなのです。
人の落ち込みにはそれだけの可能性があります。落ち込みは自分を育てる力を持っている変化であり、時期なのです。
だから、元に戻るなんて言わないこと。
「ごめんね、成長しちゃって」と、笑って言えるぐらいになってください。
凹んだときこそひらめきを摑むチャンス
成長というのは、意外に「落ち込んだところ」から始まるものです。それはうつもそうだし、そこまで深刻ではないイヤな気分でも同じです。
上司から何か言われて「うわっ、凹んだ。ラッキー、ここから何を得てやろうかな」というふうに思えたら、そこからどんどん成長できます。
「あなたがあんなことを言ってくれたから、すごく腹が立って落ち込んでいるけど、おかげさまで勉強できるわ。絶対いいものを摑み取ってやる」というふうに、自分のプラスにしていくことができるのです。
何かがあった直後にそうなるのは、なかなか難しいです。ポジティブなひらめきを得るには、自分と向き合って5日間ぐらい待つつもりでいることです。
パッとできるようになるのは仙人クラスの人ですが、仙人になるにはやはり修行をしないといけないのです。
その修行は、まずは起きたことを受け止めて、「このあと絶対に悟れる。ラッキー、ありがとね」と思うことです。
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