日米で3000万ダウンロード達成──。2018年5月にそう発表したのは、キュレーションアプリのスマートニュースだ。世界中の膨大な情報を解析し続けるアルゴリズムと、スマートフォンに最適化された使い勝手の良さで高い人気を誇るが、ニュースを提供しているレガシーメディア側は当初猛反発した。
全国紙デジタル局幹部は「取材機能を持たないスマニューは最初、われわれのニュースを使って勝手にサービスを始めました。2012年暮れに鈴木健さん(共同CEO)を呼び出して、対価を払うよう求めました」と振り返る。
ユーザーがすぐに閲覧できるよう記事内容をキャッシュ(一時保存)して表示する機能がメディア側の収益機会を奪っているといった、ただ乗り批判が起こったのだ。
スマニューはメディア側に一定の収益機会を提供しつつ、アイティメディア会長などを務め、業界で知られた藤村厚夫氏を迎え入れ、仲介役として関係改善を図った。「藤村さんの説得でメディア側の態度も軟化して、1年後には握手して一緒にやっていた」と同幹部。いまやスマニューの提携媒体は2700超に上る。
スマニューはさらに9月から米フェイスブックやグーグルなど他の大手配信先にも自動的に記事を送れるよう、記事データを変換するサービスをスタートさせた。
これは「自分たちがあらゆるフォーマットに変換するための“機関”になりますと宣言したわけで、プラットフォーマー路線をより鮮明にした。媒体側がスマニューから離れられないようにする、オールドメディアの人間には思い付かないしたたかな戦略」とデジタルメディア幹部は言う。
スマニューの戦略には業界内で賛否両論あるが、レガシーメディアの人間がまず理解すべきは、「エンジニア」「メディア」「ビジネス」の融合だ。
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