ぼくには仕事と育児の両立は無理でした

2019年7月に発刊された、海猫沢めろんさん原作の漫画『キッズファイヤー・ドットコム』(画・川口幸範/講談社)は、歌舞伎町NO.1カリスマホストが、突然現れた赤ん坊の育児に奔走するストーリー。1巻では、赤子をあやしながらのホスト仕事に四苦八苦する姿が描かれています。そこには、海猫沢さん自身が経験したホストの仕事や育児体験が反映されているとのこと。今回は漫画第1巻の出版を記念して、海猫沢めろんさんとモデルの下田美咲さんが「ホストと育児」をテーマに対談することになりました。現役ホストと結婚された下田美咲さんは現在、育児に専念する日々。「男に子育ては難しい?」「育児にはどれだけ蓄えが必要?」など、2人が経験を元に育児の本音をぶつけ合います。(構成:堀田隆大)

この漫画は女性読者にこそ読んでほしい

海猫沢めろん(以下、海猫沢) 今回の対談は僕から下田さんに声をかけさせてもらいました。というのも『キッズファイヤー・ドットコム』を誰かに読んでもらえないかと探していたら、下田さんがホストの旦那さんと結婚されて、絶賛子育て中だったので、「ピッタリな人がいる!」って思ったんです(笑)。僕は今44歳で、下田さんとは世代が離れているから、価値観もだいぶ違うかもしれないので、お互いのことを話せれば面白いかなって。


キッズファイヤー・ドットコム(1) (ヤンマガKCスペシャル)

下田美咲(以下、下田) すごいうれしい! ありがとうございます! 今旦那さんは29歳で、子どもは1歳半ですね。今日はよろしくお願いします。

海猫沢 さっそくですが、下田さんは漫画内のエピソードでどういうところが印象に残りましたか?

下田 やっぱり、海猫沢さんがホストの仕事も子育ても両方経験したからこそ生まれた物語だなって思いました。とくに、赤子が「おんぎゃ!」と泣き続けるシーンが印象的でしたね。主人公がどうして泣き出したのかを赤ちゃんの表情から考えようとするんですけど、こういう努力こそ私が旦那さんに求めていることだから、「これは本当にそう!」っていう実感がありました。

海猫沢 あぁ、そのページは僕が育児に専念していた頃に感じたことです。

下田 本当にクイズの連続ですよね、赤ちゃんの育児って。子どもの様子から「これは何を求めているんだろう?」ってずっと想像し続ける24時間。今まさに私はそれを経験中なので、すごく分かるなって思いながら読みました。

海猫沢 この漫画は講談社の『ヤングマガジン』で連載されているんですが、僕としては女性読者の方も読んでほしいなと思っているんです。これ、女性の方にも刺さる内容になっているでしょうか……?

下田 正直、1巻を読んだ感想だと、青年マンガの絵だから、育児の話と言うより、男の子が「俺も一流ホストになってみたい!」と感じるのかなって(笑)。

海猫沢 本当ですか! どっちかといえば育児コメディの方向を目指してるんですよ(笑)。東村アキコさんの『ママはテンパリスト』(集英社)って漫画が大好きなんですけど、あの作品を読むような層にも届けていきたいです。

育児をしながら原稿は書ける?

—1巻では、ホストの職場に子どもを連れてきてしまい、さまざまなトラブルが起きるシーンがあります。仕事しながらの育児の大変さが身にしみる内容なのですが、おふたりは仕事と育児の両立をどのように考えていますか?

下田 基本的には、息子のお昼寝のタイミングだけで原稿を書いています。息子が起きてる時はスマホでも仕事をしたりしますけど、そんな感じで育児をしながらでもできる範囲内に仕事を調整しています。取材や撮影があるときは、旦那さんが休みの日にスケジュールを入れる感じです。

—仕事場にお子さんを連れていったりはしないんですか?

下田 子どもを仕事場に連れていったことは1度もないです。息子がそばにいると、息子の様子の方が気になって、自分としてのベストパフォーマンスを発揮できそうにないから。だから、子どものお昼寝の時間にいかに稼げるかっていう視点で考えて仕事をしています。でも、子どもが生まれる前よりも収入は増えましたよ。作家としての筋肉がすごく育ったというか……「なせばなるもんだな」と思いました。

海猫沢 不思議なことに、僕も子どもが生まれる前より、生まれてしばらく経ってからの方が働いているんですよ。これは根本的なことなんですけど、「仕事しないと死ぬ人間がいる」って事実が身にしみるんですよね。

下田 追い込まれると力を発揮するみたいな。「お昼寝の2時間に集中しないと!」って思うと、火事場の馬鹿力みたいなものが出て、子どもがいなかった頃よりも明らかに仕事がはかどります。

—海猫沢さんは育児中の仕事はどのようにされていましたか?

海猫沢 いや、最初は全くできなかったです。仕事する時間はゼロでした。ほんと全くできないと「自殺しようかな」って気持ちになるんですよ。あの経験から「僕には育児と仕事の両立は無理なんだ」って思いましたね。未だにできないんじゃないかな。まず、朝起きられない、絶対ムリ! なにがなんでもやりたくない。

下田 たしかに仕事と育児って両立できないですよね。やっぱり、できている人は奇跡だなって思いますよ。私は自分に感動していますから(笑)。だからこそ「私ができているんだから、あなたもできるでしょ?」って態度は絶対禁句にしてます。できないのが普通。

人のアドバイスはどれくらい聞くべき?

—育児と仕事の両立ができないと気づいたときには、どうすればいいんでしょうか?

海猫沢 まず、諦める。そして、いかにお金を使わないかを考える。あとはどうやって人に助けてもらえるかを考える。他力本願が大事です。僕も最悪、実家に帰るという選択は考えましたね。

下田 育児には才能というか向き不向きもあるから、できない人には苦痛だと思います。例えば、さっき赤ちゃんの泣いている原因クイズの話をしましたけど、そんなのを24時間正解し続けるのは難しいじゃないですか。実際、うちの旦那さんは「なんかグズってる。俺じゃダメなやつ」とか言って思考停止していることの方が多いし(笑)。

海猫沢 子どもとの相性もありますね。本当にワケがわからないときも多い。

下田 人の心を読むのが得意な私でさえ「まさか泣いている原因はこれだったか!」って思うことばかりだから、世の中の人はもっとチンプンカンプンだと思いますよ。

海猫沢 今はネットにたくさん子育て情報が掲載されていますが、やっぱり個人差があるから、実際に役立てるのは難しいんですよね。

下田 とはいえ、これは自分が運営しているサロンで相談者の方と話していてよく思うのですが、自分の頭に頼らず、誰かのアドバイスを聞いたほうがいいって人がたくさんいるんですよ。頭がキレる人に相談したほうが、自分が今どうして辛いのかを客観的に分かるようになる。さっさと自分の限界を認めることも大切ですよ。

海猫沢 僕は「他人のアドバイスで成功するくらいなら、自分に従って死ぬ」派の人間なので(笑)。仮にアドバイスが正しかったとしても、お前の言うことを聞くのは癪だから、「聞いてやんねー!」って感じ。

下田 ああ、相談相手が尊敬できるかどうかも大事ですよね。私も親とか家族にはアドバイスもらわないし、ママ友にも聞かないし。「この人みたいに生きてみたいな」って、ちゃんと憧れてる気持ちがある相手を頼るのがいいと思います。

(次回は9月25日掲載予定)



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この連載について

海猫沢めろん×下田美咲 ホストに学ぶ育児のテクニック

下田美咲 /海猫沢めろん

2019年7月に発刊された、海猫沢めろんさん原作の漫画『キッズファイヤー・ドットコム』(画・川口幸範/講談社)は、歌舞伎町NO.1カリスマホストが、突然現れた赤ん坊の育児に奔走するストーリー。1巻では、赤子をあやしながらのホスト仕事に...もっと読む

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uminekozawa 旦那さん弟さんが元ホストの下田さんと対談してみました! 3ヶ月前 replyretweetfavorite

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