2018年9月、米老舗ニュース雑誌の「タイム」が1.9億ドル(約210億円)で買収された。金の出し手は顧客情報管理で最大手の米セールスフォース・ドットコムの創業者兼CEOのマーク・ベニオフ夫妻。超の付く富裕層だ。
超富裕層によるメディア買収といえば、米紙「ワシントン・ポスト」を買った米アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が有名だが、それ以外にも複数いる(下表参照)。
例えば、米老舗評論誌「ジ・アトランティック」の経営権を握ったのは、米アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏から遺産を相続したローリーン夫人だ。
超富裕層によるメディア買収が増加する背景には、当然、メディアを取り巻く厳しい状況がある。米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究チームの調査によると、2004年から16年までの間に、米国の新聞社の3分の1以上で所有者が変わったという。
「タイム」「ワシントン・ポスト」「ロサンゼルス・タイムズ」など多くの米メディアが買収された。
Photo:iStock/gettyimages
インターネットの台頭で広告収入が激減し、経営に行き詰まったメディアが次々と投資ファンドなどに安く買いたたかれていったのだ。新聞など伝統的なメディアはジャーナリズムにはこだわるものの、マネタイズは不得手で経営の効率化も不十分なケースが少なくない。
テクノロジーの導入によって劇的に経営が改善する可能性を秘めている点で、テック企業創業者に買われるケースは幸せかもしれない。実際、ワシントン・ポストは自社開発のAI(人工知能)で記事の自動執筆を進めるなど、大きな成果が出ている。
推定実売部数を試算
朝日400万部割れ 産経100万部割れ
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