僕がひきこもり状態から脱した「ありがとう」の力

人間にとって『居場所が無い』という痛みは非常に苦しく、時に、犯罪をしてでも、それを取り去ろうとする人もいます。例えば、英語も話せず、正規の仕事につけず、仲間もいないアメリカの若者は、ためらいつつも、『自分の居場所』を提供してくれるからマフィアに入る事も多いと言われています。『自分の居場所はどこにある?』は、放置すると恐ろしい『居場所の無い痛みの解消』について、深く考える連載です。

こうすれば「ひきこもり」からも脱出できる

最後にここで「ひきこもり」の例をなぜ出したかというと、さきほど少し触れましたが、アメリカから帰国直後、私自身がひきこもりになった経験があり、インプロによってそこから脱出できたからです。

人は、自分のありたい姿と現実の自分の違いを受け入れて、成長していきます。インプロは、それを非常に明快なかたちで教えてくれます。即興演技において最強のプロレスラーのような役を演じたい人が小柄でガリガリであれば、一生懸命それを演じても、全然プロレスラーには見えないというギャップを笑うコメディーにはなりえても、リアルなプロレスラー役を務めることはできません。

多くの人は、そういう失敗を重ねて「自分が演じたいもの」と「自分が演じられるもの」の違いを認識します。そして「自分が演じられるもの」のほうが、共演者や観客に共感されて必要とされるため、そちらにやりがいがあると気づき、大きく成長していきます。

しかし、ありのままの自分を受け入れることができず、「自分が演じたいもの」を追い続けてしまう人が中にはいます。しかし、それではその人の演技を共演者や観客に「面白い」と思ってもらえないので、だんだん周りから腫れ物に触るように扱われる存在になっていき、その結果、「舞台に上がる」という勇気を次第に失ってしまうのです。

人生においても「自分がやりたい理想のこと」と「自分ができる現実のこと」のギャップに苦しむことは珍しくありません。そのギャップを乗り越え、「現実の自分ができること」をうまく見つけられなかった人が人生の表舞台からいったん降りてしまうことがひきこもりなのです。

私が教えているインプロでは、この理想と現実のギャップで苦しんでいる人に対してこんなアプローチをしています。それは、「やりたい役」を意識できなくなるほどに低レベルな「やれること」を探して実践するトレーニングです。

たとえば、音楽をかけ、それが止まった瞬間に何らかのポーズをとるとか、皆で協力して、1つのポーズをすばやく取るなどです。これにいったい何の意味があるのかは普通はわからないと思います。

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自分の居場所はどこにある?

渡辺龍太

人は居場所が無いと、とにかくツラい。人によっては、ホストクラブに大金を貢いだり、犯罪に手を染めたり、あるいは、自殺する人もいる。その痛みを解消するために、参考になるのが『即興演劇論』だ。即興演劇の世界では、役者は台本も無いのに舞台に立...もっと読む

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コメント

restart20141201 ゛「ありがとう」と言われる行動は、自分がその居場所に貢献できている印 ゛ https://t.co/4erwkIhxY4 9ヶ月前 replyretweetfavorite

dojimadaisuke ごくハードルの低いタスクをこなすことで達成感や「ありがとう」をもらう,また… https://t.co/PuKZI1FC4A 9ヶ月前 replyretweetfavorite