男女のお金のやりとりは、思惑次第で美しくも陳腐にもなる

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。今回は、男性側がお金を支払うのが当然とされていた時代や、森さんが過去に貢いだ話から、お金を使うこと、使わせることについて考えていきます。

「初デートの時、男が割引クーポン持っていたので、即、別れた」

という話を、知人女性から聞いたことがある。彼女は婚活中だったので、余計に男性を見る目がシビアだったのだろう。私からすれば特に別れるほどの問題ではないのだが、彼女は「だって初デートですよ。いきなり割引クーポンなんて安く見られているし、バカにしている」と憤懣やるかたない。

彼女は結婚相談所に登録していて、割引クーポン男もそこで紹介された相手だ。初デート、しかも結婚相談所でのお見合い、という流れを考えると、確かにありえないのだろうか。「金銭感覚がしっかりしている男性だわ!」とむしろOKな女性もいるかもしれないけれど。

若かりし頃は男性に支払ってもらっていたけれど

男と女のお財布事情は、人によって基準が異なる。そんなことを改めて考えさせられたのは、私が男に貢ぐか貢がないか、という議題で討論する場に参加したからである。昭和生まれ、特にバブル期を経験している女性は「お金はすべて男性が支払うもの」という刷り込みができているかもしれない。

私はバブル期のイケイケ(死語)な様子を指をくわえて見上げていた世代なので、100%の恩恵は受けていない。それでもバブル期の余波は充分にあったので、男性側が支払う風潮だった。私も若かりし頃は男性に支払ってもらったのだが、支払ってもらって当然、という境地には至らなかった。なぜだろう。

男性に“買われている”感じや、お金の対価として扱われる自分が我慢ならなかったのか。自分も働いているのだから、多少はこちらも支払うべきだという自負があったのか。私にお金を払うメリットはない、とはなから自分を卑下していたのだろうか。むしろ私のために時間を割いてくれてありがとう、私が支払いますよ、の境地とか。

若かりし頃の私は、自分も働いているのだから、と、私にお金を払うメリットはない、のふたつのミックスだった。バブル期の風がまだ香ばしかった時代、私の周囲には「私にお金を使うのは当然」「私がお金を使わせてあげている」という女性が大多数だった。今でこそ性格が悪そうな響きだが、男性達もよろこんでお金を使っていたように思う。むしろお金を使うことで自己や自尊心を保っているというように。

お金を支払うというのは、実に気持ちいい行為なのだ。本当は、お金を使ってもらうことよりお金を使うことのほうがはるかに気持ちいい。そういう思いを男性に抱かせる女性は、すこぶる魅力的だ。

本当の紳士は、セックス前の綿菓子のような時間にお金を費やす
この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
アラフィフ作家の迷走性活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。47歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません