なぜ、中川は「ブロス」を辞めたのか?
木下 僕も以前から中川さんに聞いてみたいことがあったんです。中川さんが『TVブロス』からネットニュースの世界に移った理由って、表向きはクライアントに対する不祥事ってことになっていますけど、その気になれば「ブロス」を続けることもできたと思うんです。でも、結局、「ブロス」は辞めてしまったわけですよね。あれは、本当はどういう意図があったんですか?
中川 正直に言うと、雑誌の世界から広報に戻ろうと思ったんだよね。多分『TVブロス』は、編集者にとって日本で一番おもしろい雑誌だと思う。4年間ずっと作ってきて、「これ以上に面白い仕事は編集者としてはもうないだろうな」、と。たとえば、「ほかの雑誌の編集者をやってくれ」って言われても、間違いなく「ブロス」で味わったほどの満足感は得られないと思ったの。
木下 それは、僕も思う。絶対そうなりますよね。
中川 そう考えた場合に、このまま続けてやらせてもらうっていうのもありなんだけど、編集部にもっとおもしろい新しい編集者が入ったときに、オレは「ブロス」にとって必要なくなるだろうなとも思ったんだよね。だったら、別の方向に行くしかない。もともと自分はPR業界の仕事をしていたわけだから、そっちに戻ろうかなと。
—— でも、突然「ブロス」を辞めて、無職になってしまうことへの抵抗はなかったんですか?
中川 当時、オレは編集者をやりながら、博報堂経由でPR会社の広報の仕事も結構やっていたんですよ。あとは某出版社の広報の仕事も毎月請け負っていた。「ブロス」をやっていた当時の年収はそうしたPR系や他の雑誌の仕事も合わせて850万円ぐらいだったんだけど、PR系の仕事だけを一生懸命やれば年収500万円ぐらいは稼げるんじゃないかと思っていたんです。だからスパっと「ブロス」を辞められたの。そんな汚い計算があったんだよ。
木下 それは汚いんですかね? すごく普通だと思うんですけど。
中川 汚いだろ、それは。だって、表向きは不祥事を理由に辞めていることになっているけど、本当は後ろ盾がある状態で辞めたわけだから。