ギブ&テイクのバランス
しかし、そのギブ&テイクのバランスもあります。ギブ&テイクを同時に起こすといっても、完全に二分できるわけではありません。多かれ少なかれ、ギブ寄りの人、テイク寄りの人にわかれるので、時々、不満を持つこともあります。たとえば、金銭や労力が関与していると、「自分よりあの人のほうが得している」というような損得勘定で人間関係がはかられる、などです。
しかし、もしそこにあなたの居場所があると感じる人間関係であれば、仮にギブ&テイクのバランスが取れていなくとも、「自分ばかり損している」といった損得勘定は働きづらいものです。
20代の頃、私一人では手に負えない量の仕事を受けたことがあり、ちょっとおっちょこちょいなのが玉に瑕の仲良しの作家仲間に仕事の一部を割り振り、二人で一緒に仕事をすることにしました。しかし、彼がダブルブッキングをしてしまい、私との案件を急にすっぽかしてしまったのです。
その結果、私は納期までにその仕事をこなすことができなくなり、相当な額の収入を失ってしまいました。私の気持ちのなかでは、その損失を彼に請求したいところでした。しかし、仲がよいということに免じて、仕方なく損失を私が被ることになったのです。
このとき、私は彼に圧倒的にギブしており、彼が一方的に私の時間や信用、エネルギーやお金をテイクしたどころか、吸い取ったと感じ、やるせない気持ちでした。そして、別の仕事で顔を合わせるたびに、彼のおっちょこちょいな部分にダメ出ししたり、説教すらしていました。当時は「どうせトラブルを起こすなら、損する側ではなく自分が搾取して得する側になりたい」とすら思ったほどです。
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