台風で出社問題、マレーシアでは起こらない理由

先日の台風では交通機関が大きく乱れ、それでも多くの人が出社する姿、出社せざるを得ない状況に疑問の声が上がりました。マレーシアではこのような状況は起きないようで、その背景には社会の寛容さ、仕事のやり方の違いがあるようです。

こんにちは。

9月9日、記録的な台風が日本を襲い、通勤や通学に大きな混乱が出ました。最近では「なんで災害の日にわざわざ出社するのか」という意見が出ているようです。

マレーシア人が、どんな状況でも出社しようと頑張る日本人を見たら、「真似できない」と思うかもしれませんね。

最近プレイネクストラボが外国人ITエンジニアを対象に行った調査で、日本の嫌いなところとして、「日本人は時間に厳しすぎる」という意見がありました。

「嫌いなところ」においては「職場」が一番多く、58.5%だった。特に出社時間は厳しいと感じているようだった。また、仕事に対してルールを優先しすぎるあまり、生産性に対する意識が低いという意見もあったという。

おそらく、マレーシアにも同様に感じる人が多いのではないでしょうか。


天気予報を見ないマレーシア人

マレーシアではほとんどの人が天気予報を見ません。
日本人の多くも、マレーシアに来ると、天気予報を見なくなります。

実際にマレーシアの天気予報を見ていると、こんな感じなんです。

1日の間に、晴れと雨と曇りが全部あるのがマレーシア。
雨季ならば、夕方になると大雨が降り、道路は冠水し、車は動けなくなることも多々あります。

マレーシアに来たことがある方は、雨になると突然タクシーが捕まりにくくなった経験をした方も多いでしょう。

こうした気候の中で生活していると、「大雨なら外出を諦める」ことも必要です。なぜなら、目の前が見えないほどの大雨の中で、無理に運転すると、ときに危険を伴うからです。知り合いのタクシー運転手も「雨が降ったら休む」と言ってます。私自身もそうです。

ただし、別に誰かが「大雨だから気をつけて」などといちいち教えてくれないため、その判断は基本的には自分でするわけです。


ヘイズで自主的に休む人びと

しかし天気予報は見ないのですが、ヘイズの予想を見ることは結構あります。

マレーシアにはヘイズという煙害が起きることがあります。
今はそれが酷く、空が真っ白です。

このヘイズの時期は学校もときどき休校になります。

だいたい前日に状況が予測できるので、政府が「公立学校は休み」などと号令を出すわけです。前日の夜に政府が「翌日はみんな休み!」と決めることもありました。

私立学校などは、その前に休校になったりします。

以前、子供が通っていたのは私立学校でしたが、連絡網なんてありませんから、自主的に、生徒の親が作っているWhatsAppグループ(LINEのようなもの)で「明日は学校が休みらしいよ」などと連絡が回ってくるわけです。または新聞を見て、自分で判断します。校長から「明日は休みにするから、テキトーにほかの日本人の親に知らせておいて」と言われたこともあります。

マレーシアではこういうとき、家庭ごとに自主的に判断して休む人も出てきます。「ヘイズなので、休ませます」と言って、さっさと他の地域に家族ごと避難してしまう一家もいるわけです。そのことについて文句を言う人も少ないです。家族旅行で休むのも「あり」な国です。

日本人の親にはこれに慣れない方が多いです。「どうして連絡網がないのだ」と怒っている人もいました。誰かの判断がないと動けない、というわけです。


予定を必要以上に詰め込まない

ヘイズに限らず、マレーシアではよく休日が突然決まります。サッカーで勝ったから休み!ということもありました。

なんでこんなことができるかというと、皆、予定を必要以上に詰め込まないからではないでしょうか。ある程度の余裕を持って仕事する人が多いため、1日や2日仕事が遅れたところで困ったことにはならないのでしょう。

学校も、授業や行事予定を詰め込んでいないので、とっさの休日に対応できるわけです。

逆に、日本と仕事しているマレーシア人からは「日本人は急かしすぎ。予定を詰め込みすぎ」という愚痴をよく聞きます。

実は、マレーシア人も、遅くまで仕事することは結構あるのですが(思ったよりハードワーキングな方も多いのです)、それでも予定を必要以上に詰め込まず、「早く、早く」と急かしながら仕事することはまれです。お茶を飲みながら、楽しく仕事するのが彼ら流なのです。

なぜ、仕事を詰め込まなくてもやっていけるのか。

いろんな意見がありますが、おそらく一つには日本とマレーシアの仕事に対する違いがあると思います。例えば、マレーシアでは割とトップダウンでささっとものごとが決まる、というのがあるかもしれません。

休みも大臣が「明日は休み!」と言ったら決定で、揉めません。

日本でだったら、どうでしょうか。多分、「休みにしてもらったら困る」「電車のダイヤはどうなるんだ」「運動会の練習ができないじゃないか」などと、あちこちから文句が出て、調整が大変かもしれません。

マレーシアでは消費税も、「来月から無くなります!」と言われて、特にパニックにもならず、本当になくなってしまいました。国民の多くが何事もフレキシブルに対応するので、なければないで、なんとかするのでしょう。


どうも今回の台風の報道を見ていると、「他人の判断を待たずに、行くか行かないか、自分で判断したら」「いや会社が指示すべきだ」という意見もあり、双方、落とし所が見つかりません。

マレーシアではヘイズで学校が休校になって大喜びする学生は多いですが、災害時に出社するかどうかで揉める話は、聞いたことがありません。「自分の幸せ>仕事」が普通で、そのことに文句をいう人もほとんどいないのです。なので、こういったことが議論になること自体が、不思議に思えてしまいます。

Photo by Inge Maria on Unsplash


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野本響子さんのnoteでは、多様で寛容な国 マレーシアの実態、日本とは異なる価値観などをより幅広くお伝えしています。

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怒らない力—マレーシアで教わったこと

野本響子

編集者・ライターの野本響子さんがマレーシアで暮らし始めて感じたのは、日本にくらべて驚くほど寛容なマレーシアの社会。「迷惑は掛け合うのが当たり前」「怒る人ほど損をする」など、日本人の常識からしたら驚くことばかり。 この連載では、そんなマ...もっと読む

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コメント

kawac ぼく、マレーシアの子になる... - 5日前 replyretweetfavorite

chi_co29 「自分の幸せ>仕事」が普通で、そのことに文句をいう人もほとんどいないのです。 5日前 replyretweetfavorite

Zion_u https://t.co/nsgWCJd1LA マレーシアと日本の文化的な性質の違い。 それなりに面白いのだけど、この野本という人は日本人の性質に対する掘り下げが足らなさ過ぎて単なる事例のピックアップにしかなってない。 日本人… https://t.co/lJGPulnor7 5日前 replyretweetfavorite

yochiri 「お茶を飲みながら、楽しく仕事するのが彼ら流なのです。」のところを100回頷きながら読んだ。 うん、うん😉 5日前 replyretweetfavorite