先程、紹介したこの図を見て下さい。
まずは図の❷に属する居場所の例を紹介します。
■ あなたを本気で心配する家族・友人
ここは必需品ともいえる居場所で、あなたのことを本気で心配する家族・友人で構成されるグループです。もちろん、このグループの人たちと日常的に関わることができれば幸せで理想的です。しかし、遠く離れていたとしても、定期的に連絡を取り合い、愚痴を言い合い、お互いを励ますことができるような人間関係ができていれば、それで十分です。
私はアメリカでの大学生時代、非常に追い込まれていたことがありました。自分の言いたいことが100%伝わるわけではない環境にいると、自分の話していることをわかってくれるというだけで、その人が非常に貴重な存在になります。
しかし、私が話していることを文字通りわかってくれるからといっても、その人が必ずしも味方で「本音で接する」という居場所のお題に忠実でいられる相手というわけではありません。それにもかかわらず、遠い異国の地で自分の居場所がない時期には、話していることの意味を少なくともわかってくれる人との関係が、唯一の居場所となってしまいました。
その結果、その人から非常に理不尽な扱いを受けても、その関係を無理に続けてしまったのです。そのときは無意識的に激しいストレスを感じていました。若い頃の私は、ストレスを抱えると爆発する傾向があったので、それが他の人間関係などでも大きな火種となってしまいました。
しかし、そんな状態に陥っても、私が正気に戻れたのは、本気で心配してくれる家族・友人の人間関係の中に、自分のミクロな居場所があったからです。
自分でも異常な人間関係に薄々感づいていても、あまりにも閉鎖的な場所にいたので、その人間関係を切るという選択肢を無意識に避けていました。しかし、正しい居場所のお題である「意見を正直に言う」を、忠実に実行してくれた人がいたために、その異常な人間関係から早く離れることができ、正気に戻れたのです。
もし自分にミクロな居場所がないと感じているのであれば、まずはこの居場所からつくっていくべきです。一言付け加えるなら、この居場所自体が複数になることもあります。恋愛の相談をしたり、仕事の悩みを話せる居場所は、家族、友人など、それぞれ別の場所にあることは普通です。
ですから、この「あなたを本気で心配する家族・友人」だけで幸運にも3つの居場所を確保できれば、精神的にも強く、安定することができます。
■ 定期的に習い事などで出会う人
次に重要なのが、ものすごく仲良しということはなくても、定期的に顔を合わせる人たちの中でのミクロな居場所です。たとえば、英会話を習っていると、週に一度は同じメンバーと顔を合わせるはずです。あるいは、行きつけの店の店員さんや、お客さんなども定期的に顔を合わせる人々です。
こういう人たちとの関わりは、一見、距離のある人間関係といえます。実際、習い事で時々会う人のことはあまり覚えていなかったりするものです。名前すら覚えていないこともあるでしょうし、その気になれば一瞬で切ることができる関係です。
しかし、実はこれぐらい距離の遠いところにいる、利害関係がまったくない人々に対しては、人は心を開きやすい傾向があります。たとえば、「離婚したい」というような相談は、心配させてしまうのが嫌で家族や親友にはなかなかできません。しかし、このグループの居場所では案外発言できたりするのです。