4支配欲としての「男らしさ」征服と支配
さて、では、一体どうであると、性的な意味で「男らしい」と言えたのか?
フランスで、この当時、「男らしさ」の教科書としてよく読まれていたのは、アルフレッド・デルヴォーの『現代好色辞典』である。その根本にあるのは、「男らしい男は女を『手にいれ』、言葉のあらゆる意味で『女をものにし』なければならない。つまり『女から快楽を味わい』、『女を利用し』、『女を言いなり』にさせなければならない」といった考え方である。それがつまり、少なくとも男同士の間では、「カッコよく」、お手柄自慢であったということを、コルバンは様々な具体的事例を挙げて説明している。
デルヴォー流のセックスは、「射精の強さを促すと考えられていたある種の激しさと、交接行為の迅速さ」が重要で、その表現は、「仕切り壁をぶち破る」、「血だらけになるほどセックスする」、「金玉がひっくり返るほどヤる」、……と引用するのも憚られるほどである。激しければ激しいほど、早ければ早いほどいい、というわけで、女性からのセックスの巧拙の評価は一切考慮されていなかった。
征服欲、支配欲がこうした「男らしさ」の目的なのか、それとも性的欲求不満の解消を自由に、好きな時に行うために、女性の征服と支配が必要だったのか、はたまた、その解消の仕方が支配的であることで征服欲が満たされたのか。……
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